◆資金支援以外の具体的な取り組みは?
クールジャパン機構は、官民ファンドの弱点が目立っているような印象を抱かせます。かねてより、官民ファンドはその存在意義を疑問視する声がありました。官が主導することで投資プロセスの透明性が低く、情報開示が少なくなりがちなのです。公金の還流疑惑はそれが悪い形で表出したと言えるでしょう。
民間の投資ファンドや金融機関が手を出しにくい分野に対して、資金を供給しがちだという問題もあります。クールジャパン機構はスパイバーへの追加出資を2021年9月に行っています。しかし、スパイバーは2020年ごろにクモの糸の大量生産という計画を中止し、たんぱく糸で再起をかけました。
ちょうど同じタイミングで将来の事業価値を担保にするスキームを駆使し、金融機関から巨額の借入をするようになっていました。そうした中で、クールジャパン機構は出資というリスクの高い方法を選択したのです。
官民ファンドが、投資先の支援体制を十分構築できるのかという懸念もあります。もともと、官民ファンドは専門的な人材や目利きが不足しやすいと指摘されています。民間の投資ファンドと比べると給与水準が低くなりがちで、優秀な人材は積極的に入りたがらないからです。
◆官主導における現場支援の限界
優秀な人材を獲得しても、十分な活躍ができるのかにも疑問が残ります。投資ファンドというと華やかな世界のようにも見えますが、ハンズオン支援の場合は支援先の会社に出向き、場合によっては現場に入ることも数多くあります。民間の投資ファンドが外食チェーンを立て直した際、担当者が店舗に入ってオペレーション改善や顧客満足度向上のヒントを得たというエピソードも存在します。企業価値を高める取り組みは泥臭いのです。
しかし、官主導のファンドで、このような活動が推奨されるでしょうか。クールジャパン機構はハンズオン支援を行なっていましたが、踏み込んだ支援ができていたのかどうかは不明確な部分があります。具体的な取り組みに関する情報開示に欠けているため、実態もあまり見えてこないのです。
現在、政府はAIや半導体、造船など新たな成長分野への投資を加速しようとしています。国が投資を主導し、国際的な競争力を高める狙いがあるのです。官民ファンドの活用が積極化する可能性もあります。
だからこそ、官民ファンドの在り方そのものを根本から議論する必要があるように見えます。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

