それでも原田氏は、破産に至るまでの経緯そのものには、いまも納得していない。通商産業省(現・経済産業省)出身の弁護士でもある原田氏が、経営破綻の裏で何が起きていたのかを語った。

◆引き継ぎもない状態で会長就任
――まず、原田さんと船井電機の関わりについて教えてください。代表取締役会長に就任された経緯も含めて教えてください。原田:もともとは弁護士としてのご縁です。私の事務所に出入りするお客さんの中に、船井電機と関わりを持った方がいて、「先生にも少し応援してくれ」と相談を受けました。最初は顧問弁護士のようなサポートだろうと思っていました。2024年の夏、大阪の本社に呼ばれて役員と面接なども行い、気がつけば、私がいつの間にか代表取締役の会長ということになっていた。引き継ぎもはっきりしないままです。正直、自分でも驚きました。
――会長に就任された2024年8月末から、10月の破産開始決定までの約2か月間、船井電機の経営状況はどのようなものでしたか。どんな課題を感じていましたか。
原田:一番の問題は、情報がまったく入ってこないことでした。旧経営陣から、きちっと経営状況などを聞かなければいけないと、私も積極的に働きかけたのです。けれども、そのころにはもう人がだいぶ抜けていて、社内体制も複雑な状態だった。財務のことや労働問題について聞きたくても、しかるべき人がなかなか出てこない。部長クラスにも個別に会おうと追いかけましたが、有耶無耶になってしまった。ガバナンスを含めて私自身の責任も感じていますが、どうしようもない面がありました。
◆意図的な倒産を疑う、資金の動向
――2021年の買収以降、船井電機から約300億円の資金が流出したと破産申立書に記載されています。この資金流出について、また破産に至った主な要因について、どうお考えですか。原田:細かい中身までは私も把握しきれていません。ただ、私どもが捉えていた情報では、会社にはまだ不動産もありましたし、資金繰りも、無茶苦茶に倒産するという状況ではなかった。それなのに民事再生棄却という結果になったということは、合理的な理由が見当たらない以上、何かあるんじゃないか。私の立場で言ってはいけないことですが、多少なりとも意図的に会社を潰しようという動きがあったのではないか、と心の底では思っています。もっとも、確証的なものではありませんが。
――前社長の上田智一さんについては、どんな印象をお持ちですか。
原田:一度お会いした程度ですが、ちゃんとした人だなという印象でした。経営者というのは、うまくいくこともあれば、いかないこともある。上場廃止後にミュゼプラチナムなどへM&Aで進出したことも、市場の伸びを考えれば、決して異常な方向ではなかったと、後から振り返れば思いますよ。コロナの影響も、同社に限らず、サービス産業全体にとって本当に大きかったと思います。

