◆1000万円の値がつく「法人口座」

「用途は特殊詐欺の着金先だったり、SNSで売りさばく薬物の〝郵送販売〟の口座に使われたり。犯罪をやる人間からすれば、足がつかない口座は飛ばしの携帯電話と同じレベルの必需品だし、使い捨て感覚。それに、近年は中国向けの需要も伸びている」
国外へ資産を移して安全に管理したい中国の富裕層の金が、送金規制をかいくぐり日本へ雪崩れ込む。不動産や車を買うための〝受け皿〟という、グレーな構図もあるという。
中村さんが仮想通貨口座の有無を聞かれたり、橋本さんが送金を手伝わされたりした理由はここにある。すべては足のつかない一点へ収束していくのだ。
「好まれるのは信用力と限度額の上限が高く設定できるメガバンク。逆に、信金や地銀は使い勝手が悪いので敬遠されます。高度な話でいうと、法人口座のニーズが今、すごく増えていて。金融機関や口座の形態、送金上限額によっては1口座1000万円の値がつくこともある。そのため、SNSで釣ったカモに会社を開かせ、口座を開設させているグループもあります」
◆野放し状態の犯罪組織、捜査当局の一手は?
自分の手を汚さず、他人の名義を、できるだけ長く使いたがる犯罪組織の面々。はびこる違法転売の先に待っているのは、逮捕だ。「こうした事態を、当局も指をくわえてみているわけではありません。改正犯罪収益移転防止法(犯収法)が6月2日に成立し、正当な理由なく有償で送金を代行する〝送金バイト〟には、新たに2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科されることになりました。さらに警察による新たな捜査方法も導入されています。これは、金融機関の協力で架空名義の口座を開設し、買い取りを持ちかける詐欺グループにあえて提供。入金された瞬間に凍結して被害回復につなげる、新たな手法です」(前出・記者)
現行でも口座譲渡は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。犯収法は公布から1か月後の施行となり、逃げ切れる時代は終わろうとしている。
「とはいえ、Xで釣れるようなカモがこんな細かい法改正を知っているわけがない。犯罪グループからすれば、口座さえできればいいわけで、後で捕まろうがどうなろうが気にも留めません。口座売買はそう簡単になくなるマーケットではないですよ」(前出・ブローカー)
深夜のスマホに灯る「サクッと稼がない?」――その一行に手を伸ばせば、失うのは口座だけではない。家族の連絡先も、勤め先での信用も、自分の人生も、丸ごと値札をつけられて売り飛ばされる。決して手を出してはならないのだ。
取材・文/日刊SPA!取材班

