◆大切なペンをなくした挙句、100均で弁償
「田崎のスーツの胸ポケットに、見覚えのあるボールペンが刺さっていたんです。返却を求めると、田崎は悪びれもせず『使いやすいから』と拒否してきたんです。もちろん返せと言ったんですが、『今からアポなんだけど、これしかペンないので貸しといてくれ』と言ってそのまま立ち去ってしまいました」翌日、佐野さんが再度返却を求めると、驚くべき答えが返ってきた。
「田崎は外回りの最中にペンを紛失したというんです。それで謝るどころか、いかに自分が忙しかったかを力説し、最終的には『あのペンはクリップが弱えんだよ』と文句まで言い出す始末でした」
佐野さんは大切なペンだったことを説明し、弁償を求めた。押し問答の末に田崎さんは渋々弁償することを受け入れたのだが……。
「翌日、田崎が持ってきたものを見て唖然としました。どう見ても100円ショップで買ったとしか思えない、安物のボールペンだったんです。『これで十分だろ』という感じに言われて、どこまで馬鹿にする気なんだろうと思いました」
父親からの大切なプレゼントを勝手に私物化された挙げ句に紛失、さらに100均で済まそうとする不誠実さ。これで、佐野さんと田崎の関係は完全に決裂した。
「それからは一切会話しなくなりましたね。田崎がいる飲み会には参加しませんでしたし、仕事で必要がある時以外は、同じ空間にいるのも極力避けるようになりました」
◆周囲から搾取し続けた結果、天罰が
数年後、田崎さんの振る舞いに罰が下ることになった。「当時は違う部署でしたが、田崎は数年間にわたり、会社の備品として購入したティッシュやコーヒーなどを自宅に持ち帰って私物化していたんです。さらには、取引先への贈答品として経費で購入したワインも自分のものにしていて……。そうした数々の不正行為が発覚したんです」
社内で大問題になり、田崎さんは出勤停止処分に。
「その後、会社とどのようなやりとりがあったのかはわかりませんが、田崎は自ら会社を辞めたようでした。不正行為がバレる前から、田崎は他の同期の企画を横取りしたり、後輩から借りた金を返さなかったりと色々と悪事を働いていて、とことん嫌われる存在になっていました。周りに利用できる人間がいなくなって、その矛先を会社に向けたのかもしれません……」
世の中に潜む「搾取タイプの人間」から身を守るには、佐野さんのように毅然として距離を置くことこそが、最善の防衛策なのかもしれない。
<TEXT/和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め

