家を売却…失った莫大なお金
博さんは「もう限界だ」と、終の棲家になるはずだった一戸建ての売却を決断します。
しかし、売却時の築年数は30年。地方の戸建て市場は厳しく、建物の価値はほぼゼロ、土地代だけの評価となり、売却価格はわずか850万円でした。残債約900万円を返済するには売却額だけでは足りず、仲介手数料などの諸経費も合わせると100万円近い持ち出しに。70歳まで働いてギリギリ貯めた手持ちの貯金を切り崩してなんとか補填したため、手元の資金はほぼ底を突いてしまいました。
頭金、リフォーム代、これまでの返済総額に加え、固定資産税や外壁塗装などの維持費を計算すると、15年間で2,000万円以上の大金を失った計算になります。
「家を買っても意味がなかった……むなしくなりましたよ」
家賃月4万円…公営団地で得た安らぎ
二人が引っ越したのは、同じ沿線にある、家賃月4万円・2DKの公営団地でした。「内心は、団地なんて……と思ったんです」と栄子さんは振り返ります。
しかし、生活費が月12万円に収まったことで精神的なゆとりが生まれ、栄子さんの体調も回復していきました。暮らしてみれば居心地もよく、さらに、孫たちがふらりと遊びに来るようになったという「オマケ」までついてきました。
「今の団地、昭和な感じで好き。商店街も面白いし、なんか落ち着くんだよね」
団地近くの商店街の純喫茶や、コロッケ・焼き鳥などの買い食いスポットが、孫世代のツボにはまっているようなのです。泊まるスペースはないため日帰りですが、江藤さん夫婦にとっても負担がなく、団地暮らしで得た想定外の喜びでした。
江藤さん夫婦の経験は、「孫のため」「老後のため」という気持ちがかえって生活を破滅させる典型例でした。家を買う前に一歩立ち止まり、現実的な資金計画を見極める視点が不可欠です。
