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失言しても存在感が消えない男・麻生太郎 政治学者が解説「『本音』と『失言』の境界をあえて狭くする話法の正体」

失言しても存在感が消えない男・麻生太郎 政治学者が解説「『本音』と『失言』の境界をあえて狭くする話法の正体」

85歳になっても、皇室典範の改正案についての発言が波紋を呼んでいる麻生太郎氏。多くの政治家が言葉の角をとり、責任を薄め、誰からも批判されにくい表現に逃げ込むなかで、麻生氏はあえて逆へ進む。短く、強く、皮肉を交えて言い切る。失言を恐れない率直さが、支持者には「本音を語る政治家」として映り、批判者には「不用意な政治家」として映る。この二面性こそが、麻生構文の本質である。政治学者・森川友義氏が、麻生太郎構文の異質性をひも解く。(以下、政治学者・森川友義氏による寄稿)

森川友義氏。”政治家構文”の詳細は著書『政治家の「答えない」技術』に詳しい

◆「本音」と「失言」の境界をあえて狭くする話法

拙著『政治家の「答えない」技術』では、高市構文や進次郎構文をとりあげたが、最近再び話題の麻生太郎元首相については扱わなかった。しかし、ここにおいて麻生構文をとりあげ、その異質性について検討しておくのも、政治家の構文を知るうえで役に立つと思われる。

麻生太郎構文の特徴は、一言でいえば、「本音」と「失言」の境界をあえて狭くする話法である。多くの政治家が言葉の角をとり、責任を薄め、誰からも批判されにくい表現に逃げ込むなかで、麻生氏はしばしば率直な言葉を使う。そこには、政治家構文にありがちな曖昧さとは異なる迫力がある。聞き手は、賛否を問わず、何を言いたいのかを理解しやすい。

ただし、その率直さは危うさも伴う。たとえば、2008年には「未曾有」を「みぞうゆう」、「踏襲」を「ふしゅう」と読んだことが大きく報じられた。これは構文というより読み間違いであるが、麻生氏の言葉が常に注目され、細部まで切りとられる政治的環境をよく示している。麻生構文は、発言の中身だけでなく、言い方、読み方、間のとり方まで含めて評価される構文である。

もう一つ象徴的なのが、カップラーメンの値段をめぐる発言である。庶民感覚を問われた場面で、実際の相場よりかなり高い金額を口にしたことは、麻生氏の言葉が生活感覚との距離として受け止められる典型例となった。本人にとっては軽い受け答えであっても、聞き手には、政治家の暮らしぶりや感覚の違いを映す言葉として響く。

◆皮肉と断定――記憶に残るが独り歩きもする

麻生構文の中心には、皮肉と断定がある。質問に対して、真正面から制度論を積み上げるよりも、短い言葉で相手をいなす。説明よりも一言の印象を優先する。そのため発言は記憶に残りやすい。半面、言葉の一部だけが独り歩きしやすい。

また、麻生氏の言葉には、育ちのよさと荒っぽさが同居している。上から目線に聞こえる瞬間もあれば、場を笑わせる余裕にも見える。丁寧に逃げる政治家が多いなかで、麻生氏は雑に踏み込む。その雑さが失点にもなるが、同時に政治家としての肉声を感じさせる。

麻生構文が興味深いのは、失言を完全には恐れていないように見える点にある。多くの政治家は、批判されないために言葉を薄める。麻生氏は逆に、言葉を薄めすぎない。余計な一言が出る危険を抱えながらも、短く、強く、皮肉を交えて言い切る。その姿勢が、支持者には本音を語る政治家として映る。

配信元: 日刊SPA!

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