
これまで日本株は長期的に低迷しているといわれがちでしたが、現在、半導体企業を中心に目覚ましい復活を遂げています。世界的に見ても、「今、日本の半導体企業は熱い」と注目が集まっています。本記事では、YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FP・鳥海翔氏が、なぜ半導体株がこれほどまでに急騰しているのか、その背景にある「AIとメモリ需要」の仕組み、そして今後の投資において注意すべきポイントを解説します。
キオクシア株「1年で40倍」を生んだAI特需の“裏側”
最近の半導体株の急騰をけん引しているのは、データを記憶・保存する「メモリ」関連の企業です。
日経半導体株の投資信託においても、上位企業である東京エレクトロンやアドバンテストが大きく伸びています。なかでも桁違いなのが「キオクシア(旧・東芝メモリ)」で、なんと1年間で約40倍(+3,941%)という凄まじい株価上昇を見せました。
なぜ、これほどまでにメモリ企業が市場から再評価されたのでしょうか。その背景には、AIブームに伴う「需要の移り変わり」があります。AI開発の初期段階では、AIの計算処理を担うGPUを製造する「NVIDIA(エヌビディア)」に世界中の資金が集中しました。
しかしその後、「GPUを増やしただけではAIは効率的に動かない」という壁に直面します。AIをスムーズに動かすには、GPUのそばで働く「短期の記憶(HBM)」が必要だとわかり、HBMを製造するサムスンやSKハイニックス、マイクロンといった企業の株価が高騰しました。
そしてさらに遅れて、「AIには短期記憶だけでなく、大量のデータを保存する長期の記憶(NAND)も必要だ」という事実が判明します。NANDを専門に製造しているのが、日本のキオクシアや米国のサンディスクです。
もともとAI関連としては市場からまったく評価されておらず、期待値が極めて低かったこれらの企業が、急きょ「AIに不可欠な存在」としてスポットライトを浴びたため、1年で40倍を超えるような爆発的な株価上昇へとつながったのです。
株価急騰はバブルか、適正か?…データセンター需要と「メモリ業界特有の波」
このように急騰したキオクシアですが、今後もこの成長は続くのでしょうか。
メモリ業界には特有の「波」があります。メモリは主にスマートフォンやパソコンに使われるため、これらの需要が高まれば価格が急騰して莫大な利益を生みますが、逆に需要が落ち込むと在庫過多となり、価格を大幅に下げないと売れなくなるという、世の中の需要に振り回されやすい性質を持っています。
しかし今後の展開としては、「これからは世界中のあらゆる場所にAI向けのデータセンターの建設が進むことで、スマートフォンやPCの買い替えサイクルに依存せず、メモリ需要も底堅く推移する可能性がある」との見方も広がっています。
半導体は工場の生産能力や技術の壁があり、急激な需要増に対してすぐに増産できないため、希少価値が上がり価格が高水準で維持されやすいという特徴もあります。この予測どおりに市場が推移すれば、いまの急騰は一時的なバブルではなく、適正な成長過程として今後も日本の半導体企業は伸び続ける可能性があります。
こうした見方のとおりに市場が推移すれば、現在の急騰は一時的なバブルではなく、成長過程の一局面であり、日本の半導体企業の成長余地はなお大きいと考える向きもあります。
一方で、注意点もあります。たとえば一部の日系半導体関連の投資信託において、直近で爆発的に伸びたキオクシアの構成割合が約30%を占めているケースがあります。
NANDの世界シェア1位はサムスン(約30%)、2位はSKハイニックス(約20%)であり、キオクシアはマイクロンやサンディスクなどと残りのシェアを争うポジションです。もし今後キオクシアの株価が急落して調整に入った場合、構成割合の大きさゆえに日系半導体全体にも強い下落圧力がかかる点には注意が必要です。
