「当選したのに、手放しで喜べなかった」年金月13万円の71歳夫婦、公営住宅の抽選に20年かけて〈やっと受かった日〉

「当選したのに、手放しで喜べなかった」年金月13万円の71歳夫婦、公営住宅の抽選に20年かけて〈やっと受かった日〉

「老後の住まい」が間に合わない問題

抽選倍率の高さは前述のとおりですが、公営住宅をめぐる日本の住宅問題はそれだけではありません。民間サイト「都営住宅ワンダーランド」が2026年2月に公開した、2021〜2025年の5年間の募集データの集計・分析によると、この期間の募集戸数は5万9,500戸に対し応募者は約54万6,000人。一般区分の平均倍率は7.5倍ですが、高齢単身者向けの「シルバーピア」は供給数が極端に少なく、高倍率になりやすい構造が続いています。必要としている人がなかなか入れない状況です。

民間賃貸における高齢者の「住みにくさ」も深刻です。株式会社R65が2025年7月に実施した「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査」によれば、65歳を超えて賃貸住宅を探した人のうち、年齢を理由に入居を断られた経験がある人は30.4%。直近1年間に限ると36.7%に上昇しています。低収入だからではなく、高齢というだけで物件の選択肢が狭まっていく現実があります。

こうした状況を受けて、2025年10月には改正「住宅セーフティネット法」が施行されました。高齢者などの「住宅確保要配慮者」が安心して賃貸住宅に入居できる環境整備が目的で、見守り体制のある「居住サポート住宅」の創設などが盛り込まれています。しかし制度が整う前にすでに70代を迎えてしまった世代にとっては、「もう少し早ければ」という気持ちはどうしても残ります。

都営住宅での新生活

フジオさん夫婦はその後、当選物件への入居を決めました。アイコさんの膝については、都の窓口に手すりの設置申請ができることがわかり、手続きを進めることに。引っ越し費用は子どもたちが少し援助してくれることになりました。

入居後、月の家賃は2万3,000円になります。年金13万円から差し引いても10万円以上が手元に残る計算で、6万円を超えていた家賃との差は歴然です。「あと10年早ければ」という後悔は消えませんが、フジオさんは「これからの分を大事にするしかない」と言います。

公営住宅の抽選は、応募すれば必ずいつか当たるものではありません。20年間外れ続けることもあれば、もっと長くかかることもあります。だからこそ、老後の住まいについては収入・家賃・貯蓄のバランスを早い段階から見直しておくことが必要です。

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