おしゃれな人が「正解探し」をしない理由
さらに、センスを育てるうえで重要なのは、集めた知識の量よりも、その知識についてどれだけ関心を持って観察できたかです。
同じ雑誌を読んでいても、ただページをめくるだけの人と、「このコーディネートはなぜ素敵に見えるのだろう」と考える人とでは、センスの伸びかたに差が出ます。もちろん、後者のほうが確実にセンスは磨かれます。
では、そのセンスに正解はありますか?
ありません。正解はないのが、センスです。
考えてみてください。絵が大好きな2人の小学生に自分の肖像画を描いてもらったとしましょう。
ひとりはアニメや漫画が好きで、小さい頃から好きなキャラクターの模写を趣味にしていた子。もうひとりは幼い頃からアートのワークショップや美術館、ギャラリーに出入りし、絵を自己表現のツールとして捉えている子。
きっとアニメ好きの子は黒いアウトラインで輪郭をしっかり描き、きれいなフェイスラインやしなやかな肢体にキリッとした目鼻立ちをした表情豊かな肖像画になるでしょう。
もうひとりのアート好きの子は、自由な色彩で、もしかしたら鼻の穴や歯まで描き上げて、なんともユニークな肖像画になるかもれしません。
この2つの肖像画のうち、どちらが正解でしょうか?
その質問自体がナンセンスであることに気づくはずです。そう、2人ともいいのです。
2人のこれまでの関心が画角いっぱいに表現されていて、それぞれ際立った個性を放っています。今まで見てきたもの、関心を注いできたもの、探求と練習を重ねてきたものが、その肖像画に表れているのです。
「好き」を信じることがセンスを育てる
さらに大事なのは、自分をどう捉えているか、自分の個性をどう信じているかも絵に表れるということです。絵を評価する際に重要なのは、技術のうまさではありません。関心のあるものへの探求をどれだけ重ね、自分の表現したいことが他者にどれほど伝わるかが重要なのです。
ファッションもまったく同じです。
ひとつの正解を探すのではなく、自分の関心を重ねた先に生まれる「あなたらしさ」をベースにした判断こそが重要なのです。
自分の関心を信じ続けることで、センスは必ず磨かれていきます。
日々センスを磨くことで、漠然としたイメージで判断していたものが、意識的な判断へと変わっていくでしょう。
そして、そのセンスをどう表現していくかを考えることが、ファッションの楽しさの始まりです。
- センスとは生まれつきの才能ではなく、蓄えた知識に基づく判断力
- 知識量よりも、「なぜ素敵なのか」と問い続けることがセンスを育てる
- センスに正解はなく、自分の関心の積み重ねが生む判断こそが唯一の答え
Action
「自分の判断の傾向を知る」
- 今日、「素敵だな」と思ったものの画像をスマホに1枚残す
- 1の画像が素敵だと思った理由を、ひと言だけメモする
- 1と2を1週間続けて、自分の判断の傾向を探してみる
「もう50代だから」「若づくりはしたくない」――そんな思い込みが、おしゃれを楽しむ気持ちを縛っているのかもしれません。
次回は、センスを育てるために手放したい“年相応”という呪縛についてお話しします。

