
現役時代に高収入だったとしても、給与が途絶えて年金生活に入った途端、生活水準を下げられず「老後破綻の危機」に陥るケースは珍しくありません。特に「子どもからの仕送り」をあてにしていた場合、その仕送りがなくなることで一気に窮地に追い込まれる可能性があります。本記事では、CFPが事例をもとに、“金銭援助頼み”の家計設計が抱える落とし穴と、老後の家計をどう考えるべきかについて解説します。
「オレのおかげ」が口癖の〈元・年収1,000万円超〉67歳父…“お金が貯まらない”暮らしぶり
カズユキさん(仮名・67歳)は、妻のミキコさん(仮名・66歳)と2人暮らしです。努力のかいあって、現役時代の年収は1,000万円を超えていました。
そんな夫婦には、一人息子のユウトさん(仮名・34歳)がいます。カズユキさんにとって、ユウトさんは自慢の息子です。中学受験で中高一貫の難関校に合格を決め、そのまま名門大学に進学。ストレートで卒業したあとは、誰もが知る大企業に就職しました。
カズユキさんは、そんな息子のことを自身が正しく導いてきたという自負があり、「オレのおかげだ」が口癖でした。
ユウトさんは現在、夫婦の家から電車で30分ほどのところに、妻と生まれたばかりの娘と3人で暮らしています。「家を出たら仕送りするのが当たり前だ」というカズユキさんの教えに従い、毎月8万円の仕送りを続けています。
カズユキさん夫婦のいまの収入源は、この仕送りと夫婦で月約30万円の年金だけです。
しかしカズユキさんは現役時代から「金があるのもオレのおかげ」と、あればあるだけ使うタイプ。教育費にもかなりかけていたので当然、貯金もあまりありません。せっかくの退職金も住宅ローンの返済にあててしまい、現在の貯金は約1,000万円です。
それでも、「老後は息子もいるから大丈夫だろう」と、生活水準を落とすことなく、飲み歩いたりゴルフに行ったりと、年金も仕送りもほぼ使い切る生活を送っていました。
「うんざりなんだよ」息子が突きつけた〈まさかの宣告〉
今年の正月、ユウトさんが家族を連れて帰省してきました。夕食を共にしお酒も入り、饒舌になったカズユキさんがこうこぼします。
「おいユウト、お前も昇進して給料上がったろ? そろそろ海外旅行に連れて行ってくれてもいいんだぞ」
すると、いつもおとなしく、父の言うことを黙って受け入れるユウトさんがこう返しました。
「……勝手に行ったら?」
予想もしない返答に面食らっていると、意を決したように続けます。
「住宅ローンもあるし、娘も生まれたばかりでこれから教育費がかかるところだし、正直難しいよ。それにこの際だからはっきりさせておくけど、もう仕送りはやめようと思ってる」
「えっ? どういうことだ」
頼りにしていた仕送りをやめると言い出し、カズユキさんは驚きが隠せません。
「小さいころから勉強ばかりさせられて、好きなことはなに一つやらせてもらえなかった。試験でいい点取っても褒められないし、大好きな部活も将来の役に立たないから早くやめろって言われて」
「でも、オレのおかげでいい暮らしができてるだろう?」
「そういう恩着せがましい言い方がうんざりなんだよ。なんでずっと仕送りしてたかわかる? 毎月8万円を10年以上。もう学費分は払ったと思うから、これでチャラだろ。もう、『オレのおかげ』とか二度と言わないでほしい」
まさかの宣告に呆然とするカズユキさんを置いて、ユウトさんは自分の家族とともに帰っていきました。
