◆「高学歴まみれ」で育つ弊害
ーー自分たちが上澄みなのは、彼らも承知しているのでは?西岡:頭ではわかっていても、感情では納得できません。
我々も覚えがあることですが「見える世界」の中で平均・常識を推し量ってしまいますよね。
「年収300万円で、平均より少ない」と嘆く人に対して「いや、アフリカの家庭を見てみてよ!」と声をかけても慰めにはならないでしょう。
いわゆる相対的貧困という状況ですが、彼らにとって、東大生や医学部生しか存在しない環境が「世界」なんです。
ーー「高学歴なのに」というより、「高学歴だからこそ」なんですね……。それでは、「東大うつ」にならないためには、どのように育てていけばいいのでしょうか?
西岡:敢えて千尋の谷から突き落とすことをお勧めします。つまり、「高学歴まみれ」な状況から、引きはがしてみるのです。
ハイソな方々に囲まれて、それを当たり前だと認知しているところに、ゆがみが生じている気がしてなりません。確かに中高一貫校のほうが、みな行儀よく、頭もよくて、物腰も柔らかい「上品な」同級生と安全に過ごしていける確率は高いでしょう。
ですが、私はあえて今の時代だからこそ「公立中学校」への進学をお勧めしたい。東大進学者のほとんどは中高一貫校であり、東大への道は確かに細く不確かなものになるでしょうが、それよりも大事なものをはぐくみながら大人になれるはずです。
◆無菌室で育った子供たち
我々は「東大なのにうつ」と捉えてしまいますが、彼らにとって「東大」は当たり前のこと。つまり、彼らからすれば「普通にうつ」でしかない。
それは、それまでの人生で非常に高いレベルの正解を出し続けることを求められ、それに応え続けてきた能力と環境によって生み出されるものでした。
無菌室で育てられたがゆえに、他者に対する免疫が異常に低くなってしまう。
「子どもが傷つかないように」と至れり尽くせりの待遇を与えたくなりますが、そこをこらえるのが真の親心なのかもしれません。
<取材・文/布施川天馬>
―[東大卒作家・布施川天馬の教育キャリア通信]―
【布施川天馬】
著述家、教育ライター。 一般財団法人「ドラゴン桜財団」評議員。 1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を編み出し、一浪の末東大合格を果たす。著書に最小コストで結果を出すノウハウを体系化した『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』など。株式会社カルペ・ディエムにて、お金と時間をかけない「省エネスタイルの勉強法」などを伝える。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)

