ライバル企業を絶望させる、エヌビディアの強力な「囲い込み」
エヌビディアにはもう一つ、ライバルを絶望させるほどの強みがあります。それが「CUDA(クーダ)」というソフトウェアです。
GPUというのは、あくまでハードウェア、つまり「機械」です。この機械に「こういう計算をしてくれ」と指示を出すためには、機械が理解できる言葉で命令を書かなければなりません。CUDAは、まさにその「エヌビディアのGPUと会話するための共通言語」のようなものです。
今世界中のAI開発者たちは、このCUDAを使ってプログラムを書いています。大学の授業でもCUDAを教わり、ネット上のAI関連の教材やサンプルコードもほとんどがCUDA前提で作られている。つまり、AI開発の世界では「CUDAが話せて当たり前」という状態がもうできあがっているんです。
ここで、エヌビディアのライバル企業のAMDという会社の立場を考えてみましょう。AMDも性能面では決して悪くないGPUを作っています。ところがAMDのGPUではCUDAが使えません。AMDのGPUに命令を出すには、まったく別の言語を一から覚えて、プログラムもゼロから書き直す必要があるのです。
そうなると、プログラマーたちはどう思うか。「えー、今さら別の言語を覚えるの面倒くさいな。今までどおりエヌビディアでいいや」ってなりますよね。
これは、iPhoneユーザーがアンドロイドに乗り換えるのを避けるのとまったく同じ構造です。写真も、アプリも、操作の慣れも、全部iPhoneの中にある。性能だけ見ればアンドロイドも悪くないのに、「移行が面倒」というだけで乗り換えられない。こうした「一度使い始めると、面倒くさくて他社に乗り換えられなくなる」仕組みを、ビジネスの世界では「ロックイン(囲い込み)」と呼ぶそうです。
エヌビディアはGPUという機械だけでなく、CUDAという言語で開発者をがっちり囲い込んでいる。これが、単なる半導体メーカーとは次元の違う、エヌビディア最大の強みなんです。
弱みの推論市場も制圧…「完全体」となったエヌビディア
話をまとめると、エヌビディアはAI開発に欠かせない最強のレシピ(GPU)を持ち、プログラマーを逃がさない仕組み(CUDA)があり、しかも工場(固定費)を持たないから利益率がバグっている。
しかしこのことをすべて理解したのは、残念ながらだいぶ後でした。最初から理解していたのは「ファブレスモデルの優位性」の部分だけ。ですからエヌビディアの株を持つ握力も当然弱く、2022年の暴落を耐えてプラスに転じ、20〜30%上がったところで利益確定売りしてしまいました。
しかし僕は前述した強みに加え、さらなる材料を知ったことで、後にエヌビディア株を買い直すことができ、株価上昇の波に乗れました。
エヌビディアは現在、大量のデータを処理する「学習」分野では独走状態にあります。しかし学習済みモデルを動かす「推論」分野ではグーグルのTPUなどの独自開発チップ(ASIC)の台頭による追撃を受けている状況でした。
しかしAI推論に特化した革新的なLPU(言語処理ユニット)技術を持つ新興企業「Groq」のメインスタッフを吸収したことで、推論市場でも支配力を決定づけたのです。今回エヌビディアに加わったGroqの社長だったジョナサン・ロスは、元グーグル社員で、同社のTPU開発を主導した人物です。
今回エヌビディアが、業界トップクラスの推論チップ設計チームを取り込んだことで、エヌビディアは半導体企業として「学習」と「推論」の両方を支配し、「完全体」になったと言っても過言ではないでしょう。
オモロー山下
お笑い芸人
実業家/個人投資家
