◆■「恋愛感情」利用で詐欺の人材確保か
また、最近は詐欺の“かけ子”を集めるため、「恋愛感情」を利用した人材確保も目立ってきている。30代のBさんは昨年、出会い系アプリで中華系カンボジア人女性とマッチした。彼女に会うために今年5月にカンボジアを訪れた時、あやうく拉致されそうになったという。「彼女から『夫に浮気されて、仕返しをしたい。カンボジアまでの旅費もホテル代も出すから、その手助けをしてほしい』と頼まれたんです。数カ月にわたりやり取りしていたし、電話で通話もしていたから、すっかり信用してしまいました」
期待で胸を膨らませて空港に降り立つと、合流するはずだった彼女は現れず、代わりにチャットで、迎えに来た車に乗るよう指示された。
「前もって予約してもらったホテルはプノンペンにあったのに、迎えの車に乗ってから『シアヌークビルに行って二人でゆっくりしたい』というメッセージが来たんです。シアヌークビルに詐欺拠点が集まっていることは知っていたし、『こりゃだめだ』と思って。速度が落ちたころを見計らって、走行中の車からなんとか逃げました」



今回、Bさんはことなきを得て逃げ出すことができたが、同様のケースで、海外で行方不明になっている日本人もいる。前述のAさんの母親は、「外国に住んでいる女性と仲良くなり、『旅費を出すから会いに来てほしい』と持ち掛けられ海外へ渡航した息子が、行方不明になってしまったという被害相談がきている」と話す。
「旅費無料」や「高収入」といった甘い誘いの先に、帰れない現実が待っていることもある。騙されて詐欺を強要された場合は、人身売買の被害者となるだけではなく、加害者にもなってしまう。一人でも多くの被害を防ぐため、さらなる注意喚起と対策が求められている。
取材・文・写真提供/泰梨沙子
【泰 梨沙子(はた・りさこ)】
共同通信グループ系メディアで記者を務める。’21年に独立。フリージャーナリストとしてタイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスの人道問題について執筆

