【CFPの助言】「善意の援助」が自身の老後を脅かすことも
このようなすれ違いは、どうして起こってしまうのでしょう。原因として考えられるのはまず、「目的・金額・タイミング」が共有できていない点です。「してあげたい」気持ちと「求められている援助」が一致していなければ、双方が納得できる形にはなりません。
また、お金の援助には、本人が気づかないうちに「期待」が含まれていることもあります。「ここまでしたのだから、これくらいは返してほしい」という思いが無意識に混ざってしまうと、受け取る側にとっては重く感じられ、すれ違いの一因となり得ます。
しかし、今回のケースで最も問題なのは、ユキコさんが老後資金を取り崩して援助している点です。
総務省の2025(令和7)年の家計調査報告(※)によれば、65歳以上の単身無職世帯における支出の平均額は約16万1,000円となっています。年金受給額が月約13万円のユキコさん、平均的な暮らしをしていても月に約3万円の赤字です。赤字額は年間で36万円、15年であれば540万円にのぼります。
老後資金は、これからの生活費や医療費、介護費用に備えるためのものです。また、家の修繕費や家電の買い替えなど、このほか突発的な支出も発生します。金銭援助をはじめ、まとまった支出をする際には、「今後の自分の生活に影響はないか」を長い目で見ることが大切です。
孫の進学を応援したいという気持ちは自然なものですが、金銭援助は無理のない範囲で行うのが基本です。
また、生活費や教育費といった名目で仕送りしたつもりでも、受け取った側がそのつもりで受け取っていない場合、年間110万円を超えてしまうと「贈与」とみなされて課税対象となってしまう場合があります。そのため、今回のようになにもいわずに振り込むのではなく、使途を明確にしておくことをおすすめします。
コミュニケーション不足がトラブルの種に…家族を守る「お金のルール」
たとえ家族間であっても、お金のやりとりにはルールがあると安心です。お金を出す前に、目的・金額・タイミングを共有しましょう。
そして、援助の「限度額」を決めておくことも大切です。どこまでなら援助できるのか、自分なりの基準を持っておくことで、“無意識の期待”も薄れ、気持ちよく援助できるでしょう。
家族だからこそ、「いわなくてもわかるだろう」と思いがちです。しかし、お金のやりとりにおいては、往々にしてその思い込みがすれ違いの原因になります。
特に老後資金は、これからの生活を支える大切な資産です。「してあげたい」気持ちと、「どこまでできるか」を切り分けて考え、無理をしない選択で自分の生活を守ることが、結果として自分自身と家族関係の両方を守ることにつながります。
石川 亜希子
CFP
