◆■「頼れる人がいない」が12人に1人
一ノ瀬さんが「私はここにいていいんだ」と初めて思えたのは、大学生になってバンドのライブに足を運んだときだったといいます。それまでのお風呂場でひとり泣いていた時間の長さを思うと、その一夜がどれほど眩しかったか、想像するとこちらまで少し胸が熱くなります。内閣府の令和7年「人々のつながりに関する基礎調査」には、もうひとつ気になる数字があります。「困った時に頼れる人がいない」と答えた人の割合が8.0%。ざっくり12人に1人です。教室でも、職場の会議室でも、電車の一車両のなかにも、たぶん静かに含まれている数字なのだろうと思います。
◆■歌になれば、居場所になる
面白いのは、一ノ瀬さんが「かつてお風呂場でひとりで泣いていた自分に宛てて曲を描く」と話していたこと。過去の自分に手紙を書くように歌をつくると、それが不思議と、いま同じように泣いている誰かに届く。頼れる人が一人もいなかった夜に、たまたま流れてきた曲だけがそばにいてくれた――そんな経験は、音楽好きなら誰でも一度はある気がします。
<再構成/日刊SPA!編集部>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

