
子どもが困っているなら助けたい――それは親としてごく自然な感情でしょう。しかし、その善意が思わぬ「不公平」を生み、家族関係に深い亀裂を残してしまうことがあります。経済状況の異なる2人の娘を持つ69歳夫婦は、次女一家への援助を続けた結果、長女から涙ながらに責められることに。親心と公平感、そのバランスはどう取るべきなのか。見ていきましょう。
長女と次女、まったく違う2人
中部地方の町で暮らす伊東康子さん夫婦(仮名・69歳)は、月25万円の年金と約2,200万円の貯蓄で、穏やかな老後を送っていました。しかし、二人の娘の「経済格差」が、夫婦を悩ませることになります。
長女の美香さん(38歳)は昔から成績優秀で、地元の私大を出た後、東京で就職。今は大手企業に勤めながら(小5・小2)の子育て中。都内のタワーマンションで暮らし、世帯年収は1,500万円超です。
一方、次女の奈緒さん(35歳)は地元で専門学校へ進学、就職。夫は中小企業で働き、次女自身はパートタイマー。アパート暮らしをしながら子ども(小4)を育てており、世帯年収は650万円ほどです。
「姉妹といっても、本当になにもかも違うんです。長女はどう見ても生活に不安はありません。心配なのは、やはり次女と、その孫のほうでした」
伊東さんは、次女の奈緒さんが産んだ孫を気にかけ、密かに援助を始めました。孫の習い事代の肩代わりにお小遣い、おもちゃや洋服のプレゼント、そして生活費の補填まで――。東京暮らしの長女とは物理的な距離があり、家が近い次女やその孫とは、頻繁に会っていたという違いもありました。
援助額は、総額で約350万円まで膨らんでいたといいます。そんな中、事件が起きたのは、家族が実家に集まった正月のことでした。
明るみになった援助の実態…長女「昔から私には厳しかった」
伊東さん宅のリビングで、美香さんがこんな話を持ち出したときのことです。
「うちの長男がね、今度サピックス(進学塾)の冬期講習で一番上のクラスに入ったのよ。お受験にもそろそろ本腰入れないとだし、お金かかっちゃう」
「中学受験か、すごいわね。でも、あなたたちのところは大丈夫でしょう? 私たちは奈緒のところに援助するだけで手一杯だから、助かってるわ」
「――え? 援助ってなに?」
伊東さんの口から出た何気ない言葉をきっかけに、“次女の孫への金銭的援助”の事実が明るみにでたのです。
美香さん自身、自分たち姉妹の経済格差はわかっているはずです。しかし、同じ娘という立場で「孫に対する援助を受けていた妹と、まったくなかった自分」――それをきっかけに、お金はもとより“愛情の差”を感じてしまったようなのです。
「いいなあ、奈緒は。子どもを可愛がってもらって、お金までもらって。うちの子には、お年玉ぐらいだもんね。昔からそうだった。長女の私は厳しくされて、奈緒は可愛がられて。……だったら将来、私はお父さんとお母さんの介護をする義務はないよね」
涙声でした。美香さんは予定を切り上げて、夫と子どもたちを連れて早々に東京へ戻っていきました。
「350万円の援助を責められたというより、長女がずっと『不公平だった』と思っていたことが一番つらかったです。でも、姉妹で経済格差があり、孫の暮らしに差があるのも事実なんです。どうしたらよかったのか……」
