
サッカー・ワールドカップでは、勝敗やスーパープレーだけでなく、退場処分や罰金が大きな話題になることもあります。では、選手やチームに科された罰金は税務上どのように扱われるのでしょうか。実は、政府が科す罰金とFIFAなど民間団体が科す制裁金では、税務上の取扱いが大きく異なります。『トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か——税制が映し出すアメリカの真実』の著書がある奥村眞吾税理士が、ワールドカップで起きた出来事を題材に、アメリカの税制から「スポーツと税金」の意外な関係を見ていきます。
サッカー人気は「三大スポーツ」に及ばず
サッカー・ワールドカップ開催国アメリカでは、アメリカンフットボール、バスケットボール、野球に比べると、サッカー人気は依然として限定的です。それでも開催国ということもあり、各地で「Watch Party」が開かれるなど、ワールドカップらしい熱気は感じられます。
そんななか、アメリカ代表はベスト16でベルギーに敗れました。その前のボスニア・ヘルツェゴビナ戦では、FWフォラリン・バログン選手がレッドカードを受け、一発退場となりました。本来であれば、自動的に次の試合も出場停止となるはずでした。
ところが、その後、トランプ大統領は自身のSNSなどで、バログン選手の次戦出場停止を見直すべきだとの考えを公言しました。そして、その後FIFAは異例にも次戦の出場停止を猶予すると発表し、バログン選手はベルギー戦への出場が認められました。FIFAはこの判断理由を公表しておらず、トランプ氏の発言との関係についても公式な説明はありません。
もっとも、試合はベルギーが4対1でアメリカを圧倒し、ピッチ上では決着がつきました。FIFAは出場停止を猶予した一方で、バログン選手とアメリカサッカー連盟に対し、4万ドルの罰金を科しています。
罰金は税務上「経費」になるのか
ここで興味深いのが、この罰金の税務上の取扱いです。
政府が科す罰金や過料は、法律違反に対する制裁であるため、税務上は必要経費として控除することはできません。
例えば、取引先へ向かう途中にスピード違反で反則金を支払った場合でも、その罰金は事業に関連していても税務上は経費になりません。
一方で、今回のようにFIFAや所属クラブ、スポーツ団体など民間組織が科す制裁金については事情が異なります。それが事業上通常必要な支出であると認められる場合には、税務上、必要経費として認められる可能性があります。
プロサッカーでは激しいプレーの結果としてレッドカードを受けることは珍しくありません。リオネル・メッシ選手は国際大会や欧州クラブ大会などで少なくとも3回、クリスティアーノ・ロナウド選手は少なくとも13回のレッドカードを受けています。もちろん退場が望ましいわけではありませんが、プロスポーツというビジネスでは、一定程度避けられないリスクの一つともいえるでしょう。
