第百四十二話 大暑の花絵「ハイビスカス」

第百四十二話 大暑の花絵「ハイビスカス」


7月23日から二十四節気は「大暑(たいしょ)」に

一年でもっとも暑さが厳しくなるころを表し、「暑さが極まる」という意味を持つ節気です。
そして、夏の節気も大暑まで。2026年は8月6日で大暑が終わり、8月7日からは暦の上では秋が始まります。

暦の上では夏もまもなく終盤を迎えますが、この時季には照りつける日差しの下で草木は勢いよく葉を広げ、夏の花々も鮮やかな彩りを競い合います。盛夏ならではの行事も数多く行われるころです。

大暑の季節感

■ 土用の丑の日
土用は、立春・立夏・立秋・立冬の前に設けられた約18日間の期間を指します。
土用は、土の気が盛んになる期間と考えられ、古くから土を掘るなど土を動かすことは避けられてきました。また、季節の変わり目にあたることから、体調を整えるための期間ともされています。
特に土用の丑の日には、滋養のあるものを食べて暑さを乗り切る風習があります。現在ではうなぎが定番ですが、この習慣は平賀源内の発案によって広まったという説がよく知られています。

■ 祇園祭
京都・八坂神社の祭礼として知られる祇園祭は、7月を通して行われる日本三大祭のひとつです。
平安時代に疫病退散を願って行われた「御霊会(ごりょうえ)」を起源とし、豪華な山鉾巡行は「動く美術館」とも称えられています。
梅雨明けの青空に映える山鉾の姿は、京都の夏を象徴する風景として、多くの人を魅了しています。

強い日差しや入道雲、青い空。夏がもっとも夏らしく輝くこの季節に、南国を思わせる《ハイビスカス》をご紹介します。

太陽を映す、一日一輪の輝き ─ ハイビスカス

□ 出回り時期:5〜10月(最盛期は6〜9月)
□ 香り:なし
□ 学名:Hibiscus rosa-sinensis
□ 分類:アオイ科 フヨウ属
□ 別名:仏桑花(ぶっそうげ)、扶桑花(ふそうか)、後生花(グソウバナ)
□ 英名:Chinese hibiscus、Hibiscus
□ 原産地:熱帯アジア(諸説あり)

ハイビスカスは、直径10cmを超える大輪の花を咲かせる熱帯性の花木です。
鮮やかな赤をはじめ、ピンク、オレンジ、黄色、白など花色が豊富で、一輪咲くだけでも夏らしい華やかさを感じさせます。

花は基本的に一日でしぼむ「一日花」ですが、次々と新しい花を咲かせるため、長い期間その美しさを楽しめます。強い日差しを受けていきいきと咲く姿は、南国の風景を象徴する存在として世界中で親しまれています。

■ 名前の由来
「ハイビスカス」は、古代ギリシア語の「hibiskos(ヒビスコス)」に由来します。これは植物学者ディオスコリデスがアオイ科植物(マーシュマロウ)に用いた名称で、現在ではフヨウ属(Hibiscus)の学名として受け継がれています。
また、日本や沖縄には、この花にまつわるさまざまな呼び名があります。

・仏桑花(ぶっそうげ)
日本では古くから「仏桑花」と書かれます。「仏さまに供える桑のような花」という意味があり、美しい花を供花として大切にしてきたことに由来すると考えられています。

・扶桑花(ふそうか)
「扶桑」は、中国神話に登場する東方の霊木の名です。太陽が昇る神聖な場所を表す言葉でもあり、太陽を思わせる鮮やかな花色から、この名で呼ばれるようになりました。

・後生花(グソウバナ)
沖縄では「後生(グソー)」は「あの世」を意味します。ハイビスカスは祖先へ供える花としても親しまれ、「後生花」と呼ばれることがあります。

・アカバナー
沖縄では赤い花を意味する「アカバナー」の名でも親しまれています。現在では赤以外の品種も多くありますが、沖縄の人々にとっては身近な花の呼び名として定着しています。

■ 文化史
・神の花
ハイビスカスは、古くから神々へ捧げる神聖な花として大切にされてきました。特にインドでは、女神カーリーやガネーシャへ供える花として知られ、生命力や浄化、力強さの象徴とされています。
一方、ハワイでは州花として広く親しまれ、歓迎や祝福を表すレイや髪飾りにも用いられるなど、人々の暮らしに欠かせない花となっています。

・日本への伝来
江戸時代には、琉球王国との交流を通じて島津藩へ伝わったとされ、日本本土へ広まるきっかけのひとつになりました。
慶長14年(1609年)には、島津家久が駿府へ仏桑花と茉莉花を献上した記録*も残っています。
その後、温暖な地域を中心に観賞用植物として広く親しまれるようになりました。

*慶應義塾大学学術情報リポジトリ『明治前園芸植物渡来年表』参照

配信元: 花毎

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