余命宣告と看取り…「最後の親孝行」が自身の老後を考えるキッカケに
それから7ヵ月後。カズオさんは、ミノルさん夫婦が見守るなか、静かに息を引き取りました。最後の数ヵ月は多くの時間を父と共有でき、穏やかでいい時間が過ごせたそうです。
そうはいっても、ミノルさんのなかにまったく後悔がないわけではありません。心のどこかに「もう少し早く気がついていれば……」という思いが消えません。
しかし、カズオさんの看取りをきっかけに、ミノルさんは自身の老後について真剣に考えるようになりました。あと数年で定年を迎え、人生の第2章がスタートするミノルさん。自分たち夫婦の老後設計を本格的に見直す必要性を感じています。
【CFPの助言】「あのとき気づいていれば…」老後の後悔を減らす2つの備え
カズオさんの看取りを経て、自身の老後の課題が具体的に見えてきたミノルさん。ここからは、ミノルさんのように定年を控えた世代へ向けて、老後の後悔を減らすための2つのポイントを解説します。
1.「仕送り資金」を老後の資金へシフト
一見すると資金に余裕があるように見える家計でも、子どもがいない世帯では教育費がない分可処分所得が多くなりやすく、現役時代の生活水準のまま老後生活にシフトしてしまうことがあります。
定年後の世帯収入と、新たなライフプランに基づく支出を予測して、詳細なキャッシュフロー表を作成してみましょう。数字で可視化することで安心感を得られます。
ミノルさんの場合、これまで仕送りしてきた5万円を旅行や趣味などに使うのか、あるいは将来のために運用するのかなどの検討もできます。
2.医療・介護リスクへの備えを夫婦で進める
子どもがいない夫婦の場合、将来どちらかが倒れた際や介護が必要になったときのために、サポート体制を早めに作っておくことが重要です。具体的には、どのような医療や介護を望むのか夫婦で共有し、資産を「見える化」しておきましょう。口座情報や保険加入状況を一覧にして、お互いが把握できるようにしておくことが大切です。
また、どちらかが一人になったあとの生活費や認知症リスクに備えて、必要であれば後見制度の活用も視野に入れるとよいでしょう。
経済的な支援だけでなく、時間を共有する大切さを知ったからこそ、自分たちの最期についてもリアリティを持って向き合えるようになったミノルさん。まずは夫婦で「これらの暮らしとお金」について話し合い、必要な対策を洗い出すことにしたそうです。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
