◆「うるさいんだよ!」突然の怒声に車内が静まり返る

春先で花粉の飛散が多い時期だったこともあり、マスクを着けて乗車していたものの、しばらくすると花粉症の症状が出始めたという。
「できるだけ我慢していたんですが、くしゃみが止まらなくなってしまいました」
周囲へ迷惑をかけないよう、小さくくしゃみをするように心がけていた。しかし、何度が続いたそのとき、「うるさいんだよ!」と、近くに座っていた男性が突然大きな声で怒鳴ったという。
「最初は何が起きたのかわかりませんでした。本当にびっくりしました」
田中さんは申し訳ない気持ちもあり、「すみません、花粉症で……」と説明した。
◆「花粉症なら仕方ないですよ」救われた乗客の一言
そのとき、近くにいた別の乗客が、「花粉症なら仕方ないですよ。わざとやっているわけじゃないですし、マスクもしていますから」と、穏やかな口調で声をかけた。そのひと言で、張り詰めていた空気が少し和らいだという。怒鳴っていた男性は田中さんをちらりと見たものの、それ以上何も言わずに目を逸らしたそうだ。
「私を責めるような雰囲気ではなくなったので、本当に救われました。これからも迷惑をかけないように気をつけたいと思っています。でも、体調不良やアレルギーなど、自分ではどうにもできない事情を抱えている人がいることも理解してほしいです」
電車では周囲への配慮が欠かせない。それは、田中さん自身も十分に理解している。そして、田中さんは最後にこう振り返った。
「怒鳴られたときは、イヤな気持ちになりました。でも、『わかってくれる人もいるんだ』と思えたことが、一番うれしかったですね」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

