40~50代になると気になってくる血管の健康。中でも大切なのが、血管の99%を占める毛細血管の状態です。毛細血管が劣化すると、老け見えや血管系の病気のリスクが高まります。医学博士の福島忍さんに、毛細血管の働きや正しいケアについて伺います。
40代以降に増えるゴースト血管
血管に関する病気は、動脈硬化や脳出血、心筋梗塞など多くありますが、それらの対策となると、動脈や静脈といった大きな血管を中心に考えがちです。
でも、実は全身の健康を支えているのは、動脈と静脈をつなぐ「毛細血管」。医学博士の福島さんは、その理由をこう話します。
「毛細血管は直径5〜20μm(マイクロメートル)と、髪の毛の10分の1ほどの細さしかありませんが、全身の血管の約99%を占め、酸素や栄養を細胞に届け、不要な二酸化炭素や老廃物を回収する重要な役割を担っています」(福島さん)
細くて繊細な毛細血管は加齢とともに減少する他、生活習慣の乱れやストレスの影響を受けやすいという特徴があります。
「生活習慣などによって毛細血管が傷つくと、血流が悪くなり、体の隅々まで酸素や栄養が行き届きにくくなって、老廃物も溜まったままになります。そうすると細胞の働きも低下し、様々な臓器の機能低下の原因になります」(福島さん)
さらに、傷んで劣化した毛細血管をそのままにしていると、血流が通わなくなり、「ゴースト血管」へと進んでいくことがあります。
「ゴースト血管とは、血管の“形”はあっても血液(赤血球)が流れていない状態を表す言葉です。正式な医学用語ではありませんが、『人が住まなくなった街(ゴーストタウン)』のように、『血液が通っていない血管』という意味で名づけられました」(福島さん)
人間の体には、体内の状態を一定に保つ「恒常性」という仕組みがあるので、一時的に毛細血管がゴースト化しても、血流を改善すれば元に戻ります。
しかし、ゴースト血管の状態が長く続くと再生が追いつかなくなり、最終的には機能が失われてしまいます。
肌の老化や認知症のリスクに…?ゴースト血管の影響
毛細血管がゴースト化すると、血液(赤血球)が末端まで届きにくくなります。その結果、健康面でも美容面でも不調やトラブルにつながりやすくなります。
1.肌の老化やトラブル
皮膚の末端にまで酸素や栄養素が行き届かなくなると、ターンオーバー(肌の生まれ変わり)がうまくいかなくなり、シミ・たるみ・くすみなどの肌の老化や、吹き出物・ごわつきといった肌トラブルが起こりやすくなります。
2.手足の冷え
血液は心臓から全身へ送られ、体の熱を運んでいます。しかし、ゴースト血管が増えた部位では血流が滞りやすくなるため、温かい血液が末端まで届きにくくなり、手足の冷えにつながります。
3.むくみ
毛細血管の機能が衰えると、リンパ管が水分や老廃物を回収しきれず、水分や老廃物が血管外に漏れ出てむくみの原因になることがあります。
4.高血圧
血流が悪く、体の末梢で血液が停滞すると、その分心臓が強めに血液を送り出すため、血圧が上昇して高血圧の原因になることがあります。
5.脳梗塞
脳の毛細血管が詰まると、酸素や栄養素が届かなくなって脳梗塞が起こります。脳梗塞で倒れて重篤になる人と、そうでない人がいますが、その違いは毛細血管の量や質に関係していると言われます。量が多く、質がいい人は、健康で長生きできると考えられます。
6.認知症
脳血管性認知症の原因の一つに、「小さな脳梗塞」とも言われるラクナ梗塞があります。
ラクナ梗塞とは、脳の中の穿通枝(せんつうし)という直径200μm(マイクロメートル)程度の非常に細い血管が詰まって起こる病気。こうした小さな脳梗塞が積み重なると脳血管性認知症の原因になります。
また、近年の研究では、ゴースト血管がアルツハイマー型認知症に関与する可能性も指摘されています。
「アルツハイマー型認知症の発症には、脳のゴミとも呼ばれるアミロイドβの蓄積が関係していると考えられています。脳の毛細血管がゴースト化すると、不要なアミロイドβの回収や排出が滞り、脳内にアミロイドβが過剰に蓄積する可能性があります」(福島さん)
脳内にアミロイドβが長年蓄積すると、タウという別のタンパク質にも異常が生じ、それが神経細胞を傷つけると考えられています。その結果、脳の働きが徐々に低下し、認知症の発症につながっていきます。

