【弁護士が解説】無断で引き出された預金の返還請求と「遺産分割」による解決法
今回のケースでは、本人の意思に基づかず預金が引き出されていたのであれば、他の相続人から不当利得返還請求や損害賠償請求などが検討される可能性があります。
しかし、実際には請求できる権利があることと、回収できることは別問題です。引き出した相続人に十分な資力がなければ、判決を得ても現実には回収が難しいケースも少なくありません。そのため、相続実務では法的責任を追及するだけでなく、残された遺産をどのように公平に分けるかという視点から解決を図ることもあります。
本件であれば、長女による預金の引き出しという事情を考慮し、残された不動産を他の二人の相続人が取得するなど、遺産分割のなかで実質的な公平を図る方法が検討されることになるでしょう。
もっとも、このような事態を防ぐためには、高齢の親の財産管理を一人の家族だけに任せきりにしないことも重要です。今回のように意図的に預金が引き出されていた場合、本人が気づけないまま被害が拡大してしまうこともあります。
親の預金や財産については、定期的に通帳や取引履歴を確認するなど、家族全体で見守る意識を持つことが、不正利用の早期発見につながります。相続で本当に守るべきものは財産だけではありません。
家族の信頼関係を守るためにも、高齢になった親の財産管理のあり方を早めに話し合っておくことが大切だといえるでしょう。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
