収入・生活環境に魅力を感じて…日本で20年働く中国人SE
もう一人、日本で約20年間、SEやプロジェクトマネジャー、システム開発企業の社長ほか、システム開発関連の仕事に従事している周昱さん(仮名)にも話を聞いた。
周さんは78年、大連市生まれ。大連理工大学を卒業後、現地の日中合弁企業に入社。半年間日本語を学んだのち日本で2年間研修。帰国後、03年に再来日して現在に至る。日本で研修した際、収入をはじめ、日本の生活環境に魅力を感じたのが再来日の動機だ。
「再来日した頃はSEの仕事がたくさんありました。当時はとても景気がよかった。私は話せましたが、あまり日本語を話せない人でも入社できました。来日後に入社した会社から別の中国系企業に転職しました。その会社は中国にエンジニアが200人、日本には50人くらいいました。現在は中国人の友人が経営する会社に勤務しています」
AIの波でますます必要になる「日本語力」
呉さんや周さんが業務上で重要だと認識しているのは日本語力だ。日本人顧客を相手とするSEは、相手の要望をしっかり理解してシステム開発を行わなければならない。
2人とも非常に流暢な日本語を話すため、日系、中国系、どちらの会社にも転職できる。呉さんによると、中国人SEは母国でITを学んだ人が多いが、大学で文系(たとえば日本語学科出身)だった人が、あとからITを学び、来日して活躍しているケースもあるという。
周さんは「(日本での)研修では、日本人が技術的なことを手取り足取り教えてくれました。それだけでなく、日本語の先生は仕事以外の日本人の生活習慣、食事の作法なども教えてくれました。それがいま、とても役に立っています」という。
中国人SEにとって、日本語力はさらに重要度が増している。システム関連の業界は、企業の予算削減なども影響し、新規のプロジェクトが減っている。さらに日本人SEの減少、AI(人工知能)による定型業務の代替などにより、今後は前述の「要件定義」ができる中国人が必要とされる、と周さんは語る。
要件定義は顧客とコミュニケーションしながらシステムの内容を詰めていく作業のため、AIが代替できない重要な工程だ。しかし、「コロナ禍の少し前からSEの日本語力が低下してきている」と周さんは懸念する。
「在日中国人が増え、自国の人とばかり接する人が多いため、日本語を使う機会が相対的に減っていると思います。また、以前と比べると、エンジニアの学力や意欲も下がってきている」と周さんは実感している。
さらにコロナ禍以降、在宅勤務が増え、チームメンバーとのコミュニケーション量が減ったことも影響しているという。SEに限らないが、周さんは「仕事では、人と人の信頼関係がいちばん大事。私たちの場合は日本語ができないと話にならない」と指摘する。
中島 恵
ジャーナリスト
