◆毒社員は心身の健康のみならず寿命まで削っていく

身近に潜む毒社員は、心身の健康のみならず寿命まで削っていくのだ。精神科医の山下悠毅氏が解説する。
「人間の欲求の根底にあるのは『安心・安全の確保』。そこが担保されて初めて尊厳や活躍、承認といった欲求が生まれます。毒社員はこの生きるための土台を壊す存在。放置すればあなたの健康に悪影響が及ぶのは当然です。朝、足が動かない。眠りすぎてしまう。夜中にひたすらスマホで動画を見てしまうといった行動は“出社”から自分を遠ざける無意識の自己防衛。心身を蝕まれているサインです」
◆静かに伝染していき内側から組織を壊す
組織開発が専門の沢渡あまね氏は「毒社員は職場全体を破壊しかねない」とも指摘。「したたかに行動する彼らは一見、技術力が高かったり数字を上げていたりするから会社も強くは言えない。すると、傲慢な態度や周囲を萎縮させる発言が“個性”として黙認され、ウイルスのように職場へ蔓延していくんです」
では、なぜ毒社員は生まれるのか。人材コンサルタントの安藤健氏はこう分析する。
「行動原理にあるのは『自己肯定感の低さ』と『歪んだ承認欲求』です。他人の手柄を横取りしたり善意を装って成果をかすめ取ったりする行為は、自分で自分を認められない、いわば承認欲求の裏返し。新しい仕事を前にリスクややらない理由を並べて正当化するのも、失敗して無能だと露呈するのを防ぐための自己防衛策なのです」
厄介なのは、当の本人には悪意のかけらもないことだ。
「彼らは彼らなりに、整合性のある生存戦略を取っているつもり。本人の前ではいい顔をし、陰で足を引っ張る人を『フレネミー(フレンド・エネミー)』などと呼びます。そんな人も内面では、表面的な人付き合いを維持しながらライバルを出し抜くために“うまくやれている”と思い込んでいる」(山下氏)
こうした認知の歪みを増長させるのが、現代の職場にはびこる評価の“バグ”だ。
「目に見える成果や能力だけで個人を評価し、落ち度や欠点を黙認する空気があると、不適切な行動までもが正当化されてしまう。そんな毒社員が出世して発言力を増し、その振る舞いが職場全体の空気になれば、彼らを手本として模倣するモンスター新人が生まれる要因にもなり得ます」(沢渡氏)

