
資産6,400万円、年収約560万円。東京都内で働く一志さん(仮名・37歳)は、生まれてから一度も実家を出たことがありません。毎月生活費を入れ、親の世話も手伝いながら堅実に資産を築いてきました。しかしここ数年、お盆休みは決まって近くのビジネスホテルに泊まります。理由は、帰省してくる兄妹一家との「恒例行事」。資産では埋められない、実家暮らしならではの息苦しさとは?
「予約完了っと…」37歳会社員、夏休み恒例“ビジホへ避難”の準備
8月が近づき、周囲が家族旅行や帰省の予定を立てる頃。東京都内の会社に勤める一志さん(仮名・37歳)は、例年通り宿泊の予約をします。場所は自宅から電車で20分ほど。5泊しても3万円ほどで泊まれるビジネスホテルです。
「お盆は都内のホテルが安くて、ありがたいですよ。精神的ストレスを考えたら、たとえ10万円でも出してしまうと思いますが」
そう笑う一志さんは、生まれてから一度も実家を出たことがありません。年収は約560万円。新卒時の月3万円から始まり、今では月6万円を生活費として家に入れています。
実家暮らしで浮いたお金は20代後半から積立投資へ。派手な投資はせず、インデックスファンドを中心に積み立てを続けた結果、資産は6,400万円を超えました。
それを可能にしたのが、実家暮らしによる圧倒的な固定費の低さ。一志さんの生活費は月10万円ほど。外食はほとんどせず、服も必要最低限。お金のかかる趣味は持たず、可能な限り投資に回してきました。年収に応じて年間150~300万円を投資に回す生活をしてきたのです。
「実家じゃなかったら、ここまで資産は増えていなかったと思います」
家事も分担し、両親が病院へ行く日は車を出すことも。家族仲は決して悪くありません。それでも、お盆は家にいたくないのです。
毎年始まる“地獄の質問タイム”
理由は、お盆になると兄夫婦と妹夫婦、それぞれの子どもたちが帰省してくるから。久しぶりに家族が集まり、リビングは一気ににぎやかになります。孫の笑い声が響き、食卓にはごちそうが並び、両親も終始うれしそう。かつて同席していたとき、その光景自体は嫌いではありませんでした。
「でもね、兄と妹はとにかく僕へのあたりが強いんですよ。僕が実家にい続けることがどうしても気になるみたいなんです」
「まだ結婚しないの?」
「彼女もいないの?」
「このままだと、お父さんとお母さんを介護することになるぞ」
「将来、うちの子どもには頼らないでね」
家族ゆえの遠慮のない言葉。仕事もしていて、生活費も入れている。親の世話も手伝っているのに、独身で実家にいる人というだけで、“どこか問題がある人扱い”です。
この質問攻撃を避けるため、一志さんはお盆・お正月・GWの大型連休時にはビジネスホテルを予約します。お正月は1日だけ新年を祝い、2日目からは「友達と旅行に行く」と嘘をつき、静かに消えるのです。
「実家になんて、とてもいられませんよ。それにね、親不孝なのは本当に僕なのか? って思うんです」
お盆を迎えるにあたって、両親は何日も前から準備を始めます。部屋を片付け、布団を干し、孫が好きそうな料理を用意。みんなで外食すれば、その費用を親が負担することも少なくありません。帰る日には、「帰省代の足しに」と、お小遣いまで渡しています。
「年金暮らしなので、ずいぶんな負担だと思いますけどね」
