親が残した「古びた書類」に振り回される日々
実家の片付けをしていると、古い登記簿や権利書、株券などが出てくることは珍しくありません。しかし、書類上の名義と実際の所有者が異なっていたり、すでに制度が変わっていたりすると、残された家族は大きな負担を強いられます。
「権利書の土地は、結果的に父の所有物ではないことが証明され、相続財産には含まれずに済みました」
そう安堵を見せつつも、サオリさんの表情は晴れません。複雑な事実確認や終わりの見えない手続きによるストレスで、心身ともに疲れ果てているといいます。
サオリさんは現在も古い株券の手続きに追われており、手つかずの遺品を見るたびにため息をついているといいます。金庫に残されていた古い書類は、家族の「知られざる過去」を突きつけたのです。
【弁護士が解説】家族に“謎解き”をさせない生前対策
相続で家族を疲弊させるのは、財産が多いことよりも、「誰の財産なのか、今も権利があるのかがわからない状態」です。
上場株式は現在、証券保管振替機構、いわゆる「ほふり」を通じて管理されているため、一定の調査が可能です。一方、中小企業の非上場株式は、株券や株主名簿が十分に整理されておらず、会社が存続しているのか、亡くなった人が現在も株主なのかを確認するだけで、多くの時間を要することがあります。
不動産についても、古い権利証を持っていることより、現在の登記名義が誰になっているかが重要です。ただし、登記名義が故人であっても、それだけで実質的な所有者まで確定するとは限りません。たとえば、親族が借金や税金の徴収を免れる目的で一時的に名義を借り、あとになってその子どもから「本来は父の土地なので返してほしい」と求められるような紛争もあります。
名義貸しや強制執行逃れは、本来行うべきではありません。それでも当事者間に特殊な約束や過去の経緯があるなら、生前に解消し、少なくとも書面に整理しておくべきです。残された家族に謎解きをさせないことも、重要な相続対策です。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
