ジャイアント白田(47歳)が語る“第二の人生”。激戦区の大阪なんばで「15年以上」串カツ店を経営し続けるワケ

ジャイアント白田(47歳)が語る“第二の人生”。激戦区の大阪なんばで「15年以上」串カツ店を経営し続けるワケ

◆あっという間に終わった“有名人効果”

――2009年に大阪・道頓堀で「串カツ しろたや」を開業しました。開業当初の集客はどうでしたか。

白田:オープン当初はお客さんが来てくれましたが、“有名人効果”は4カ月ほどで終わりました。当時はバラエティ番組にも出ていたので、正直、名前だけで1、2年は集客できると思っていたんです。簡単に稼げるだろうと、飲食店経営をなめていましたね。

――調理師学校にも通い、多くの店を食べ歩いてきた。それでも、飲食店経営では壁にぶつかったんですね。

白田:そうですね。考えてみれば、僕は飲食のプロとして知られていたわけではありません。だから「ジャイアント白田の店」と聞いても、「おいしそう」という意味では、そこまで強い引きがなかったのだと思います。

◆なぜ15年以上続けられているのか

――有名人としての集客効果が薄れたあとも、店を15年以上続けてこられています。その理由は何だと思いますか。

白田:日々の改善じゃないですかね。ビラ配りやポスティングを考えたり、観光ガイドブックやグルメサイトに広告を出したり、いろいろ試しました。1000円の飲み放題を始めたときは、かなりお客さんが来ましたね。何が効果的なのか分からないなかで、ありとあらゆることをやってきた。その積み重ねだと思います。

――現在は、どのようなお客さんが多いのでしょうか。

白田:観光客や遠方からのお客さんが多いですね。「毎年大阪に来るたびに寄っています」という方もいます。また、大阪で研修を行う会社が、各地から集まった社員を連れてきてくれることもあります。

――なんばや道頓堀では外国人観光客が増えていますが、インバウンド向けの集客もしているのですか。

白田:インバウンド向けの広告は出していません。広告を出せば外国人観光客は一気に増えますが、それで長年通ってくれている日本人のお客さんが入れなくなるのは嫌なんです。そのため、以前出していた広告をやめたこともあります。南海通り店は路面店なので、歩いている外国人観光客が入ってくることはあります。一方、道頓堀は、通りには外国人観光客が多いのに、店に上がってみると、ほとんどが日本人です。


◆難局を乗り切った合理的判断

――飲食店を続けるうえで、大きかったのがコロナ禍だと思います。

白田:あの時は本当に人がいなくなりました。店を開けてもお客さんが来なかったです。

――営業時間や酒類提供の制限もありましたよね。

白田:酒類の提供時間は、エリアによって午後8時までの地域と9時までの地域に分けられていて、うちの店は8時までのエリアでした。9時までなら、仕事を終えた人が7時頃から飲みにいけますが、8時までだと1時間ほどしかありません。これでは、なかなかお客さんも来ませんよね。正直「自分たちが何をしたんだ!」と思いました。

――制限が解除されてから、お客さんは戻りましたか。

白田:比較的早く戻ってきたと思います。とはいえ、それまでの間は状況に合わせて打てる手を打つしかありませんでした。

――具体的には、どのようなことをしたのでしょうか。

白田:当時は、国の「Go To Eat」と大阪府の「少人数利用・飲食店応援キャンペーン」があり、ミナミ地区ではさらにポイントが上乗せされていたんです。税込5500円以上の予約をすると、1人利用なら計5000ポイント、2人利用なら計6000ポイントが予約者に付与される仕組みだったんです。そこで、1人でも利用できる5500円の食べ飲み放題や、2人向けに1人2750円のコースを作りました。その結果、17時台、19時台、21時台と、ディナーの3回転すべてで全卓が埋まり、キャンペーン期間中は連日、全席が予約で埋まりました(笑)。

――雇用調整助成金なども活用したのでしょうか。

白田:制度が始まると、すぐに調べました。最初の申請はかなり複雑で、労働局に何度も足を運び、資料を作って確認してもらいました。大阪の会社のなかでも、かなり早い段階で申請したと思います。

――お話を伺っていると、白田さんって非常に合理的に仕事をされていると感じます。

白田:そうかもしれません。自分でも、そういうタイプだと思います。

◆新店オープンは「従業員の雇用を守るため」

――2024年には南海通り店をオープンしました。2店舗目を出したのは、どのような経緯だったのでしょうか。

白田:道頓堀店が入っているビル全体が、約10カ月休業することになったんです。その間に、優秀なスタッフが辞めてしまう可能性もある。自分一人なら何とか生活できても、スタッフ全員を働く場所がないまま雇い続けるのは簡単ではありません。なので、雇用を守るために、新しい店が必要だったというのが大きいですね。

――今後も店舗を増やしたいという思いはありますか。

白田:増やしてもいいとは思っています。店舗が増えれば店長などのポジションを作れますし、任せられる人が増えることで、スタッフのモチベーションにもつながると思うんです。

――出店するとしたら、どのあたりを考えていますか。

白田:やはり、なんば周辺だと思います。自分の目が届く範囲にしたいですし、僕自身、移動が嫌いで(笑)。これまで通勤や通学に15分以上かけたことがほとんどないので、ここから片道30分もかかる場所には出さないでしょうね。出しても、おそらく足を運ばなくなるので。


◆「自分のため」ではなく、誰かのために

――やはり合理的ですね(笑)。白田さんご自身は、これからやりたいことがありますか。

白田:それが、あまりないんです。欲がないことは、自分でも少し悩みではあります。大食いで、1、2年の間に一気に稼いだ時期がありました。そのときにお金も使いましたが、お金が増えること自体には、あまり幸せを感じなかったんです。たとえば、5万円だった買い物が20万円になるだけで、少しグレードが上がるにすぎない。それを手に入れたからといって、ものすごく幸せになるわけではありませんでした。

事業を伸ばすのも同じで。本来、もっと売り上げを上げたいという強い欲が仕事への原動力になるのですが、今の僕には、そういう燃え上がるような力があまりないんです。

――一方で、店舗を増やすことには、ご自身の欲とは別の意味を感じているのでしょうか。

白田:そうですね。店舗を増やして店長のポジションを作ったり、待遇や働く環境を良くしたりすることには意味を感じます。自分のために事業を大きくするよりも、誰かのために取り組む方が、今の自分にはしっくりくるのかもしれません。

<取材・文/マーガレット安井>

【マーガレット安井】
大阪府出身のフリーライター。関西圏のインディペンデントカルチャーを中心に、インディーズバンドやライブハウス、レコードショップ、ミニシアターなどを取材。現場の雰囲気や表現者の背景、地域に根づく文化のつながりを文章で伝えている。これまでにプレジデントオンライン、All About、Skream!、Lmaga.jp、Meets Regionalなどへ寄稿。 X:@toyoki123
配信元: 日刊SPA!

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