老後に必要なのは「お金」、家族との距離も人生設計の一つ
高齢者にとって、子や孫との交流は生活の楽しみや生きがいにもなります。内閣府の「令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査」では、子世代との同居・近居のメリットとして「子や孫の世話ができる」と考える高齢者が一定数います。特に仕事をしている高齢者では36.2%がこれをメリットとして挙げています。
一方で、同調査では65歳以上の回答者のうち49.5%が「子どもあり・別居のみ」となっており、親と子がそれぞれ独立した生活を営むスタイルが一般的であることもわかります。
ここで重要なのは、「孫の面倒を見ること」と「孫を大切にすること」は同じではないという点です。祖父母が疲れ切るまで孫の面倒を見る必要はありません。反対に子世代も、「近くに親がいるから」という理由だけで、育児の一部を当然のように任せてしまえば、いずれ親子関係が壊れてしまう可能性があります。
また、孫のためにお金を使い過ぎてしまっているというケースも散見されます。孫の教育費、習い事、旅行、お祝いなど、可愛い孫のためならお金を出してあげたいと思う祖父母は多いでしょう。しかし、65歳以降は自分たちの老後資金を守らなければならない時期でもあります。
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査」において、老後に必要な備えとして挙げられたのは「健康に関する備え(80.7%)」、「住まいに関する備え(25.5%)」、「資産形成・貯蓄・投資など(24.2%)」でした。
佐藤さん夫妻には2,000万円以上の金融資産があり、まだ現役で収入もあります。だからといって、子や孫のために際限なく時間やお金を使えるわけではないでしょう。将来的に病気や介護になるかもしれず、店舗や住宅の修繕費など、大きなお金が必要になることも考えられます。仕事もいつまで続けられるかわかりません。
老後のライフプランというと、年金額や貯蓄額ばかりに目が向きがちですが、実際の老後生活を左右するのは資金計画だけではありません。子どもや孫との付き合い方、自分たちの時間をどう使うのか、どこまで家族を支援するのかという「境界線」を考えることも重要です。
適度な距離を保つことは、冷たいことではありません。むしろ、家族と長く良好な関係を続けるための「人生設計」の一つといえます。
今回の佐藤さん夫妻の「毎日は会わない」という選択も、拒絶ではなく、笑顔で付き合い続けるための前向きなアプローチです。お金にも時間にも限りがある老後だからこそ、自分たちがどうありたいかを一度落ち着いて整理してみてはいかがでしょうか。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
