
資産運用をする方にとって、「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」が夢という人も少なくないでしょう。しかし、資産が潤沢にあり「FIREが可能だ」と判断しても、“想定外の要因”により計画の変更を余儀なくされる場合も……。48歳男性と80代の両親の事例を通して、CFPの山原美起子氏がFIREの“落とし穴”について解説します。
「俺は勝ち組」…〈金融資産1億円〉で夢のFIREを実現した48歳独身男性
独身のマモルさん(仮名・48歳)は、会社員時代からの節約と株式投資で、40代にして金融資産1億円に到達しました。
1億円もあれば、生活費と運用利回りを見積もると、無理に働き続けなくても暮らしていける計算です。そこでマモルさんは、会社を辞め、長年の目標だった「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」を実現しました。
退職後は平日も時間を気にせずに起床し、ゆったりランチを食べ、閑散期を狙って旅行へ。趣味にもたっぷり時間を使うことができ、「俺は勝ち組。もう一生働かなくていいんだ」と大きな開放感に満足していました。
ところが、そのライフプランは、修正を余儀なくされます。
数年ぶりの帰省…実家で目の当たりにした「高齢の親の限界」
ある日、80歳の母親・キヨコさん(仮名)が転倒したと連絡が入ったのです。
歩行には介助が必要となり、一部介護サービスを利用しながら、父親のテルオさん(仮名)がサポートすることに。それまではキヨコさんが一手に引き受けていた炊事・洗濯といった家事全般も、高齢な父親が担当します。様子を見に数年ぶりに実家を訪ねると、すでにテルオさんは疲労困憊な様子。
「……大変そうだね」
どこか他人事のマモルさんに、テルオさんはポツリと言いました。
「おまえに面倒をかけまいと黙っていたが、そろそろ限界かもしれない。俺が倒れたら頼む……」
テルオさんは、自分も高齢であることから老人ホームへの入居を検討しているものの自分たちの貯蓄が少ないこと、もし資金が底をついた場合には援助をお願いしたいことを打ち明けます。
それを聞いたマモルさんは、思わず面食らいました。自身は好きなだけ遊び、時間を持て余している一方で、高齢な両親が疲れ切っている……。
それに、親の介護費を援助することになれば、一生遊んで暮らすFIRE計画は変更せざるを得ません。
マモルさんは「このままでいいのか」と、自分の人生を問い直すことになりました。
