「子どものチカラを伸ばす」フィンランドの教育
澤野教授によれば、フィンランドが教育に力を入れ始めたのは1970年代に入ってから。その地道な取り組みが、子どもの学力向上という形で実を結びつつあるのだとか。
「1970年以降、政府主導の取り組みによって、教員の質が向上しました。そうした教員が高い指導力を発揮し、学び方や授業態度といったしつけにも気を配るようになっています。また、就学前教育制度が充実しており、小学校に通うまえにエシコウルという6歳児学級に行きます。これは、英才教育のように誤解されがちなのですが、そうではなくて、子どもが主体の活動を中心に、学び方の基礎を育むことを目的としています。6歳児学級を修了してもまだ小学校で学ぶ準備ができていない場合は、さらに1年間補習学級に在籍してから8歳で小学校に入学することもできます」(澤野由紀子教授、以下同)
日本の場合は、原則として勉強の不出来に関わらず進級できますが、フィンランドはできなかった子は進級せずに、そのレベルに達するまで待つそうです。焦らず気長に待つという、おおらかな国民性がうかがえますね。
勉強だけではなく図画工作にもチカラをいれる
さらに、フィンランドの教育の特徴として、「手先を使った授業が充実している」ことが挙げられるようです。
「日本のように5教科に特化するのではなく、編み物や木工などの授業がかなり充実しています。小学校低学年から電気のこぎりなどを使ってものづくりをするチカラを身につけ、椅子やテーブルなど作れるようになります。これらは“手の労働”と位置付けられ、創作力を養うものとして重要視されています。学校のなかでは部活などはありませんが、国が運営している芸術学校もあって美術などを習うことができます」
放課後に塾に行く習慣がないというフィンランドですが、学力は先進国のなかでもひけをとらない水準を維持しています。成熟度をはかって進級を決めたり、勉強だけではなく身体をつかって学ぶということが総合的な学力向上につながっているのかもしれません。このあたり、日本でも参考になる部分は大いにあるのではないでしょうか。
(文・末吉陽子/やじろべえ)