金銭教育でもっとも大事なこととは?
実践方法を紹介する前に、金銭教育でもっとも大事なこととは何か?を、竹谷さんが教えてくださいました。
「もっとも重要なことは、決して親の考え方・信念がブレないこと。他人と比べたり、他人をうらやんだりするのではなく、あくまでも我が家のルールを貫くことです。途中でお子さんに“おこづかいを全部使っちゃった”“○○買って~”と、泣きつかれることもあるでしょう。でも、決めたことはその子の明るい未来のためと思ってグッとこらえて貫いてください。実はそれが一番大変なのです。でも、子どもとともに親も成長できる“共育”のチャンスです。それから、兄弟でも金銭感覚には個性が出ます。そのときに、まったく同じ方法では通用しません。その子それぞれに合った進め方であせらず進めてください。それができるのが家庭教育ならではなのですから」
お駄賃制で、仕事でお金を稼ぐ意味を学ぶ
では、いよいよ金銭教育の実践です。まずは、昔ながらの“お駄賃制”で、お金は仕事をした報酬、対価としていただくものだという感覚を学びます。
「お駄賃制はどこのご家庭でも実践されるわけではありません。家の仕事にお金を払うことに教育方針上そぐわないという場合は無理に取り入れる必要はありません。ちなみに、わが家ではここから始めています。じつは、ちょっとルールを足すだけで、やる意味が違ってくるんです。まず、お駄賃を渡す仕事は家庭の仕事の中から子どもが探して、親に交渉し契約します。つまり、“今日はこれやったからお金ちょうだい”はありません。あくまで、お駄賃は契約上の仕事の対価です。報酬は親子できちんと話し合って“1仕事10円”などと決めます。さらに、次が重要!仕事が中途半端だった場合は、お駄賃はあげません。例えばお風呂掃除なら、親がチェックして仕上がりが雑だったら、合格になるまでは支払いません。仕事をきちんとしてこそ報酬につながるということを、しっかり学ぶことができます」
“KANRI箱”でおこづかいのやりくりを学ぶ
お駄賃制がきちんとこなせるようになったら、定額のおこづかい制へ移行して、お金のやりくりにステップアップ!
「おこづかい制を開始するタイミングで子どもに言い聞かせてほしいのは、渡すお金は、親が働いて得たお金の中から家計をやりくりして渡している“家計の一部”ということです。お駄賃制と違い、いきなり渡されるものなので、子どもはすっかり勘違いしてしまいがち。お金は限りあるもので、降ってくるものではありませんから(笑)」
では、気になるおこづかいの金額はどうやって決めたらいいのでしょうか?
「金額も月1回の支給日も、親が決めるのではなく、すべて子どもと相談して決めます。自分で決めることによって責任感も身につきます。まず、普段お子さんがどんなことにお金を使っているかを書き出させます。その中から、自分のおこづかいで買うものと親が買い与えるものをしっかり話し合って線引きします。そこから、だいたいいくらと金額を決めていきましょう。最初は少ない金額にして、やりくり次第でだんだん金額も項目も変更していってもいいです。金額がきめづらい場合は、ワンコイン(500円)を目安にはじめてみてください」
おこづかい制をうまく進めていくアイテムとして、“KANRI箱”がおすすめだそう。
「KANRI箱とは、家計の袋わけと同じ原理です。100均で仕切りのある箱などを購入し、そこに自分がおこづかいで賄うものの項目を書き(例えばノート、シール、鉛筆、マンガ、貯金など)、それぞれの予算を決めて振り分けする方法です。この場合、親はおこづかいを100円玉や50円玉、10円玉などで細かく渡してあげてください。毎月もらったら項目ごとに予算を振り分け、その月に使わなかったお金は、翌月に貯まっていきます。上からのぞくだけでお金の残高が一目でわかるのがいいんです。原則、仕切りから仕切りへの移動はできないので注意!」
おこづかい制で学べるさまざまなこと
子どもにやりくりを任せることによって、さまざまなことが身につくというおこづかい制。
・お金を使う喜びや醍醐味
・我慢する気持ち
・お金を使いきってしまって寂しい気持ち、不安な気持ち
・お金を貯める安心感
・ものを大切にする気持ち
・ものを見極める力、マーケティング力など。
「この経験こそが、子どもたちの“お金に困らない将来”に活かされるんです。うまくできたら、たくさん褒めてあげましょう。そして、失敗してもすぐに怒らずまず最初にちゃんと言い訳を聞いてあげて、次に活かせるアドバイスをしてあげてください。子どものうちは何度失敗してもいいんです。でも、大人になってのお金の失敗は取り返しがつきませんから」
撮影/岡村智明 構成・文/横田裕美子