耳は音や声を聞く重要な器官だからこそ、早期発見を心掛けたいところ。子どもの耳のトラブルで最も注意すべきは何なのだろうか? たなか耳鼻咽喉科の院長で、園医や校医も務める田中伸明先生に話を聞いた。
「小学校低学年までで一番多いのは急性中耳炎ですね。鼓膜の内側にある部屋を中耳と呼ぶのですが、ここにのどや鼻からばい菌が入るのが中耳炎の原因です。中耳は耳管(じかん)という管でのどと鼻につながっていて、つばを飲み込んだときなどに、空気と一緒に菌が耳に入ってしまうんです」(田中先生 以下同)
急性中耳炎は耳が痛くなり熱が出るのが特徴だ。ウイルスや細菌が原因で鼓膜の内側にある中耳が炎症を起こしており、悪化すれば膿みがたまる。鼓膜が腫れることもある。風邪が治りかけるタイミングで発症するケースが多いが、特に風邪の症状に気をつけていれば、予防や早期発見の確率は高まるそうだ。
「急性中耳炎は風邪のときが要注意です。風邪の診断のときに急性中耳炎が分かることもありますが、まずは鼻をきちんとかむことと、うがいが大事。自分で鼻をかめない子は鼻水を吸い取ってあげるのが良いでしょう。それだけでウイルスや細菌が中耳に入るリスクを軽減できます。鼻水が前に出てなくてものどに落ちていることもあるので、咳やたんにも気をつけたいですね」
急性中耳炎と診断されても、耳の痛みや熱が収まったからといって自己判断で通院をやめる患者さんも少なくないそうだ。ただ、完治せずに放置すると、急性中耳炎が滲出性(しんしゅつせい)中耳炎に移行する場合もあるという。
「滲出性中耳炎は鼓膜の奥の中耳に滲出液という液体がたまる病気です。滲出液は炎症によりにじみ出てきた液体のことで、これが中耳の部屋にたまっていると、耳の聞こえが悪くなります。軽い難聴が続くと言葉の発達にも影響したり、治りにくい中耳炎に移行することもあるので、中耳炎の治療は最後まで受けてほしいですね」
急性中耳炎とは違い、滲出性中耳炎は大きな痛みを伴わない。それだけに発見が難しそうだが、子どもがしきりに耳を触ったり、呼んでも振り向かなかったり返事をしなかったりすれば要注意だ。
いずれの中耳炎も、適切な治療を受ければ高度な難聴に至る心配は不要とのこと。風邪のとき、または耳が聞こえにくいサインを感じたときには、中耳炎の疑いがあるので、まずは医療機関に相談してみよう。
(二本松菊子+ノオト)