育休手当の基本情報をチェック
出産や育児で会社を休むと、日々の収入が途絶えてしまいますが、日本には国が収入の一部を負担する「育休手当」があります。
受給条件を満たせば、正社員やパートなどの雇用形態にかかわらず、給付金が受けられます。詳しい内容をチェックしていきましょう。
正式名称は「育児休業給付金」
育休手当の正式名称は「育児休業給付金」です。日本には、産休明けから子どもが1歳を迎えるまでの間、育児のための休暇が取得できる「育児休業制度」があります。
育児休業は規則の有無にかかわらず、すべての企業に対して義務化されているものです。そのため、対象となる従業員が休業申請書を提出すれば、企業側はそれを認めなければなりません。
しかし、休業期間中は会社側に給与支払いの義務はなく、基本的に無給となってしまいます。
この間は「雇用保険」のひとつである育児休業給付金を受給することができるのです。
ただし、育児休業の取得をせず、産後に職場復帰をしたときは育児休業給付金の支給対象にはならないため注意しましょう。
派遣・パートも対象になる
育児休業給付金の受給資格があるのは「雇用保険の一般被保険者」で、以下の受給要件を満たす必要があります。
・すべての支給対象期間において、雇用保険の一般被保険者である
・育児休業を開始した日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上必要
・育児休業の対象要件に当てはまること
「自分は正社員でないから育児休業給付金はもらえない」と思っていませんか?育休手当は派遣やパートなどの有期雇用者もすべて給付の対象です。
ただし、上記の要件に加え、以下の要件を満たす必要があります。
・育児休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続している
・子が1歳6カ月までの間に労働契約が更新されないことが明らかでないこと
育児休業給付金の詳細については、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)で確認できます。
なお、自営業やフリーランスは雇用保険の被保険者ではないため、受給資格はありません。
支給額は非課税
通常は個人の所得に対して「所得税」や「住民税」が課せられますが、育児休業給付金は「非課税」です。休業中は「社会保険料」や「雇用保険料」なども免除されます。
一方で、前年度の所得に対して課せられた住民税については、育児休業中であっても支払いが必要です。
育児で納税が難しい場合には、育児休業中の住民税の徴収が猶予される「徴収猶予制度」を活用するとよいでしょう。
猶予された住民税は、職場復帰後に延滞金とともに納税を行います。詳しくは、地区町村の窓口に問い合わせてみましょう。
育休手当はいつからいつまでもらえる?
育児休業給付金がもらえるのは育児休業期間の1年間が原則です。ただし「認可保育園に空きがない」など、延長が認められる例外もあります。
「パパママ育休プラス」を取得したときの受給期間についても確認しておきましょう。
原則は子どもが1歳になる前日まで
育児休業給付金は「育児休業期間」に受給できるお金です。支給期間は女性と男性で若干の違いがあります。
・女性:出産後(産後休業期間8週間は含まず)~子どもの1歳の誕生日の前日まで
・男性:配偶者の出産日当日~子どもの1歳の誕生日の前日まで
ただし、「認可保育園」の申し込みを行っているものの、子どもが1歳に達した以降も空きが見つからず、育児休業を取らざるを得ない場合は「子どもが1歳6カ月に達する日前」まで延長することができます。
さらに、2017年からは、子が1歳6カ月に達した後も空きが見つからない場合は「子どもが2歳に達する日前」まで再延長ができるというルールが設けられています。
育児休業制度|Ⅱ-4 育児休業の期間1-休業期間-|厚生労働省
条件を満たせば延長も「パパママ育休プラス」
男性の育児休業を促す目的から「パパママ育休プラス」という特例が制定されています。
こちらは、育児休業の対象となる子どもの年齢は原則1歳まで(1年間)ですが、夫婦ともに育児休業をすると、それぞれの休業期間を組み合わせて「最大1歳2カ月まで延長できる」という制度です。
ただし、パパママ育休プラスを利用するには、以下の要件を満たす必要があります。
・子どもが1歳に達するまでに、配偶者が育児休業を取得している
・本人の育児休業開始予定日が子どもの1歳の誕生日以前
・本人の育児休業開始予定日は配偶者の育児休業の初日以降
パパママ育休プラスを利用すれば「子どもが1歳2カ月になる前日」まで、休業とともに育児休業給付金の支給期間が延長できます。
育休手当をもらう方法は?
育児休業給付金の申請者は「雇用事業主」です。出産後、勤務先に申請の希望を伝えると、雇用主は「育児休業給付金の受給確認手続き」および「育児休業給付金の初回申請手続き」を行います。
必要書類、手続き方法
申請には「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」が必要です。
「育休開始から4カ月を経過する日の属する月の末日」までに公共職業安定所に提出します。
勤務先に申請をしてもらえない場合は、本人が申請を行うことも可能です。詳細が分からないときは、公共職業安定所の職員に相談しましょう。
申請後、受給資格があると認められたら「育児休業給付金支給決定通知書」と「(次回)育児休業給付金支給申請書」が届きます。
2回目以降の手続き
初回の申請をしても、毎月自動的に育児休業給付金が振り込まれるわけではありません。そのため、2カ月に1回の支給申請を行う必要があります。
2回目以降の申請に必要な書類は「育児休業給付金支給申請書」と「賃金の支払い状況を証明できる書類」です。
申請期日は公共職業安定所から交付される「育児休業給付次回支給申請日指定通知書」を確認しておきましょう。
初回と同じように、雇用主が公共職業安定所に提出を行います。自分で申請を行うときは、申請期限を守って提出しましょう。
育休手当の支給日について
基本的には2カ月に1回、2カ月分の支給額が口座に振り込まれます。希望すれば1カ月に1回受給することもできます。
例えば、10月10日に育児休業がスタートした場合、10月10日~11月9日までの分と、11月10日~12月9日までの分が、12月9日以降に振り込まれる計算です。
申請後、受給が決まれば「育児休業給付金支給決定通知書」が交付され、その1週間前後に振込が完了します。
ただし、給与のように毎月の振込み日が決まっているわけではないという点には注意しましょう。
初回の支給日は、少なくとも育休開始から2カ月+1週間程度、長ければ3カ月程度かかるため、この間うまく家計のやりくりができるようにしておきましょう。
そもそもいくらもらえる?計算方法は?
育児休業給付金の支給額は一定のルールに基づいて計算されます。
「育休中も会社から給与が〇%出る」という場合は、支給額が減額されたり、支給自体がなくなるケースもあります。
育休手当の計算方法
育休手当の支給額は、原則として以下の計算方法に基づいて決定します。
・育児休業開始から6カ月まで:「休業開始時賃金日額」×「支給日数」×67%
・育児休業開始から6カ月経過後:「休業開始時賃金日額」×「支給日数」×50%
ここでいう「休業開始時賃金日額」とは、育休開始前の6カ月分の給与を180日で割った金額を指します。
支給日数を30日とした場合の「休業開始時賃金日額×支給日数」は「賃金月額」と呼ばれることも覚えておきましょう。
育児休業期間中に就業した場合はどうなるのでしょうか?
育児休業期間分の賃金が賃金月額の13%(積算率が50%の場合は30%)を超えるときは、支給額が減額されます。
また、賃金が賃金月額の80%以上の場合は育児休業給付金の支給はありません。
知っておきたい育休手当の上限
育児休業給付金の「賃金月額」には「上限額」と「下限額」があります。
算定額が上限額を超えるときは上限額に、算定額が下限額を下回るときには下限額になります。休業前の給与が高い人が育児休業給付金をたくさんもらえるわけではありません。
これらの額は毎年8月1日に変更され、2020年度は以下のように決められています。
・上限額:生後6カ月以内30万5721円・6カ月以降22万8150円
・下限額:7万7220円
例えば、育休前の月収が30万5721円を超える場合でも、支給額は30万5721円の67%です。一方で、月収が7万7220円以下であった場合でも、下限額の7万7220円の67%が支給されることになります。
そのため、最低賃金の時給パートの場合、育児休業給付金の方が休業前の賃金よりも高くなるケースもあるでしょう。
まとめ
育児休業給付金の申請は、会社を通して行われるのが一般的です。本人が個人で申請することも可能ですが、提出する書類が多いため、会社との連携が不可欠といえるでしょう。
育児休業給付金を希望する人は、出産後に早めに会社に伝え、必要書類の準備をしてもらいましょう。
正社員だけでなく、派遣やパートも育児休業給付金の対象です。もらえないと諦める前に、自分が対象かどうかをしっかりと確認することが大切です。
育児休業給付金の支給額を把握することで、育児休業期間も安心して生活できるように準備しておきましょう。