過保護と普通、その線引きはどの辺?

過保護と普通、その線引きはどの辺?

第2回 親の過保護と過干渉がいけない本当の理由
“過保護がいけない!”とは、よく言うけれど、ではどこまでが過保護なのか? それって意外と線引きが難しかったりしますよね? そこで、『一人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者・立石美津子さんにお話を伺いました。

子どものやる気や責任を横取りしないで!

「子どもは、親の世話なくして生きていくことはできません。だから、まずは“保護”するのが当たり前のことですね。でも、それが行きすぎるのが過保護なんですね」(立石さん 以下同)

では、“行きすぎる”というのは、具体的にどういうことなのでしょうか?

「例えば、3歳くらいの子どもだったら、今日は雨が降ると思ったら傘やレインコートを親が持たせたりするっていうのは“保護”ですよね? それが、小学生になってもいちいち“傘を持っていきなさい!”と、親が言うっていうのは、過保護なわけです。また、幼稚園のころは親が忘れ物がないように準備したり、忘れ物を届けたりするのはまだ当然のことだと思いますが、小学校に行ったら、忘れた筆箱を届ける必要はないのに、届ける親がいますよね? つまり、子どもが自分でできる、責任を負える年齢にもかかわらず、親がいつまでも失敗しないように先回りし、責任を肩代わりしてやってしまうのは過保護なのです」

たとえ幼児であっても、自分でやろうとしていること、責任を負えることは先回りせずにやらせることが大事だと立石さん。

「2歳くらいの子が自分で靴を履こうとしているのに、できないと決めつけて履かせたり、お友だちとケンカもしないうちに“仲良く遊びなさい!”と言ったり、それはもうNGですね。年齢によって子どもがすべきことに先回りするのではなくて、どうかお子さんを信じて目の前で一つひとつ乗り越えるまで見守ってあげてください」

過保護と普通、その線引きはどの辺?

愛情をたっぷり注ぐ過保護はいくらでもOK!

さらに、立石さんは“親が先回りする過保護と愛情をたっぷり注ぐ過保護は違います”と、話します。

「過保護にならないように! というのは、甘えさせない! ということとはまったく違います。子どもがママに甘えたい気持ち、心の寂しさ、不安を満たしたい気持ちは、自分自身でなんとかできるものでしょうか? それは自分ではどうにもならないことですね。それは親が満たしてあげなくて誰が満たしてあげられますか? それを親に“もう小学生なんだから!”とか“しっかりしなさい!”なんて突き放されたら、辛いですよね」

子どもが求めてくる愛情に応えることは、年齢は関係ないと立石さん。

「甘えさせてあげることは、過保護でもなんでもありません。小学生でも“抱っこして!”と言われたら抱っこしてあげればいいし、“絵本読んで”と言われたら読んであげればいいんです。“そんな、いつまで抱っこしなきゃならないの?”なんて思わないでください。大丈夫、愛情でたっぷり満たしてもらった子どもは、その安心感によって自然に自立していきますから。むしろ、愛情不足の子が、いつまでも自立できないのです。新しいことに挑戦する意欲も勇気も持てなくなります。子どものやるべきことをとってしまう過保護はダメですが、親が愛情をかける過保護はいくらあってもいいんです」

“親”という字は、“木の上に立って見る”と書きます。親は木の上から見守り、子どもが助けを求めたときに降りていってギュっと抱きしめてあげる。そんな親でありたいものですね。
(構成・文/横田裕美子)


お話をお聞きした人

立石美津子
立石美津子
子育て本作家・講演家
幼稚園・小学校向け課外教室「エンピツらんど」の創業者。現在も0歳~小学校低学年の子ども達と触れ合いながら執筆、講演活動に奔走。自らは自閉症児を育てる母親。
幼稚園・小学校向け課外教室「エンピツらんど」の創業者。現在も0歳~小学校低学年の子ども達と触れ合いながら執筆、講演活動に奔走。自らは自閉症児を育てる母親。