「毒親に育てられた人は、自分自身が否定され続けて育ち、幸せじゃないと思っているから、子どもにもやはり同じことをしてしまいます。虐待されて育った人が、自分の子を虐待する確率が高いのと同じです」と言うのは、『子どもに何と言えばいいか、わからない時に読む本』(青春出版社)などの著書を持ち、教育カウンセラーで明治大学文学部教授の諸富祥彦先生。
では、自分が毒親に育てられたという思いがある人は、育児において、どんな注意をすれば良いのだろうか。
「まず努力すべきことは、自分にストップをかけること。イラッとしたときに止まるか・止まらないかが、大きな分かれ目になります」
でも、イラッとしやすい人、すぐにカッとなる人は、もともとの性格による部分もありそう。自分で自分を止められるものなの?
「ブレーキが効かなくなるのは、性格やストレスなどが原因ですから、難しいところもあるかと思います。自分に『ちょっと待った』がかけられない人は、物理的にストップをかけましょう」
「物理的にストップをかける」とは、どんな方法なのだろうか。
「とにかく、子どもから物理的に離れること。自分が言っちゃいけないことを言いそうなときというのは、自分でもわかるもの。感情がぐわっと押し寄せてくるときは、トイレに駆け込んで休憩するなど、その場からいなくなりましょう」
トイレにアロマなどを置いて気分転換をするのも良いそう。もちろん、すぐにそれですべて解決するわけではないが、「怒り・苛立ちをおさめる」練習をしていくことで、徐々に習慣として身につけていくことにつながるという。
「いちばん大切なのは、自分が毒親になる可能性があることを自覚し、『繰り返してはいけない』と思うことです。子どもについ嫌なことを言ってしまっても、それを自覚し、頻度を減らすだけで、子どもは変わってきますよ」
ちなみに、自分を育てた「毒親」への思いは、決着を急ぎすぎず、ゆっくりじっくり考えれば良いと、諸富先生はいう。
毒親への憎しみ・恨みを抱えていても、自分が子に「繰り返さない」という強い気持ちを持ち、自分にストップをかける努力を続ければ、「毒親」の負の連鎖を断ち切ることはできるそうだ。
(田幸和歌子+ノオト)