●「小1プロブレム」が学力低下の引き金になることも
小学校1年生は勉強の基礎を学ぶ大事な時期。ここで学級に適応できないと、その後の学力や性格に大きな影響を与えてしまうこともあるのだそう。
「1年生は、『学び方を学ぶこと』が大きな目的です。話の聞き方やノートの書き方、整理整頓のやり方などが学び方にあたります。もし、小学校への入学後、学級にうまく適応できなかった場合、長いスパンで見ると、学力の低下が心配されます。学び方を学ぶことが十分にできていないと、学びの質も低くなることが考えられます」(鈴木教諭、以下同)
学習は積み重ねが大切。その入口である「学び方」がしっかり身についていないと、学年が上がるにしたがって影響が出てくるのだとか。
「また、小1プロブレムによって性格の歪みも懸念されます。小学校において集団のルールを守ることができない子どもは、結果的に教師から叱られることが多くなります。そのことが、子どもの性格の歪みのようにものを引き起こす可能性を持っています。これは、環境が子どもの人格形成に影響を及ぼすという考え方ですが、『どうせ自分なんて…』と諦めのような感情から自暴自棄になり、負のスパイラルに陥ってしまうことも考えられるのです」
●教育の現場で実践される「小1プロブレム」の対処法とは?
子どもの将来を大きく左右しかねない「小1プロブレム」だけに、国をはじめ小学校の現場でも様々な策が練られているようです。
「国などが政策として行っていることとしては、『学級の人数の減らすこと』です。平成23年度から1クラスの人数を小学校1年生に限り35人としました。ほかにも、都道府県や市町村が条例などにより、各自治体で1クラスの人数を減らしている場合もあります」
人数を減らすことで、教師の目配りが行き届くようになるため、子どもの問題を素早く察知できるようになるのだとか。
「小学校では、『体験授業』『職員の交流・情報交換』『スムーズに取り組めるプログラムの実施』『小学校の教員による幼稚園・保育所の見学』などが行われています。未就学児が実際に小学校の授業を体験する、教員が情報交換することで、連携をとっています。また、幼稚園や保育所から小学校へのつながりを意識した学習計画を立てるケースもあります」
ほかにも、地方自治体によっては、1年生のクラスに補助の教員の配置を行って、少し手の掛かる子どもへのケアをしてもらうこともあるそうです。
小学校1年生は人生の土台作りともいえる大事な時期。自治体や学校も様々な取り組みでサポート体制を整えているようです。
(文・末吉陽子/やじろべえ)