子どもの連れ去り事件の実態について、犯罪学に詳しい小宮信夫先生に伺った。
「連れ去り事件のほとんどが、子どもが犯人にだまされてついていき起きています。世間ではいきなり襲われて連れ去り事件にいたると思っている人が多いのですが、そのようなケースは非常にまれです。なぜなら、強引に犯行に及ぶと子どもに大声で叫ばれるなどして通報されやすく、犯人にとってリスクが高いのです。一方、子どもをだまして連れ去ろうとした場合は、だますのに失敗しても、ただ声をかけただけとも捉えられ、それだけでは逮捕されません」(小宮先生 以下同)
記憶に新しい「神戸女児誘拐殺害事件」(2014年)をはじめ、「奈良小1女児殺害事件」(2004年)や「神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)」(1997年)なども、すべて犯人が巧みに子どもをだまして連れ去っていたのだとか。つまり、犯人が子どもにアプローチできる機会を作らないことがひとつの防犯法とも考えられる。
「犯罪者は子どもが2人いればだませる確率は半分になると考えるので、ひとりでいる子どもを狙うのが一般的です。ですから、ひとりでの登下校などは狙われやすいのでハイリスクだと考えてください」
●連れ去り事件の犯人は児童心理を研究しつくしている?
実は、連れ去り犯は何度も子どもに近づきだまそうとして、たくさん失敗しているという。その過程で、どうすれば子どもがだまされるのかというノウハウを学習し、児童心理のスペシャリストになっているのだとか。つまり「変な人に気をつけなさい」とか「怪しい人についていってはダメ」と教えても、それを子どもに判断させるのはとても難しいという。小宮先生は子どもを持つ親にこうアドバイスする。
「連れ去り犯から守るために、子どもには危ない場所に行かせないようにしましょう。例えば、両側の家の窓が見えない道、落書きやタバコの吸い殻などが散乱していて地域の関心が低い道路などは避けた方がいいでしょう」
登下校は友だち同士で、人目の少ない場所には近づかないなど、子が少しでも犯罪に巻き込まれないケアをすることも親の仕事といえそうだ。
(石水典子+ノオト)