数多くの小児眼科疾患に対応している日本橋はま眼科クリニックの院長・浜由起子先生に、視力回復トレーニングの効果について聞いた。
「そもそも一般の方が考える“視力回復”と、眼科医が考える“視力回復”には大きな違いがあります。一般の方が思う“近視になったから眼鏡をかける”という状態を、目が悪くなっている、と捉える眼科医はひとりもいません。眼鏡やコンタクトレンズで1.5が出るのならば問題はない、というのが眼科医の共通見解。近視を戻すというのは現時点では不可能ですし、進行を予防するために眼鏡やコンタクトといったさまざまな方法が検討されていますが、まだ画期的な方法は見つかっていません」(浜先生 以下同)
●よく見かける視力回復グッズの効果の真偽は?
ちまたには、ピンホールメガネと呼ばれる特殊なサングラスや「緑の丸を目で追う」動画など、視力回復グッズやツールが数多くある。これらを続けたからといって、視力がよくなるということもありえないのだろうか?
「ピンホールメガネのように小さな穴があいたサングラスをかけて対象物を見つめると、1.2の視力が出たりすることがあります。これは、目を細めると遠くがよく見えるようになる『ピンホール現象』と呼ばれるものであって、一時的に視力が上がったように見えるだけ。通常時に0.3の視力が1.5になるということは残念ながらありえません」
そのほか気になるのが、一時期話題になった画像が立体的に見えてくる「マジカル・アイ」だが…。
「実は視能訓練士協会も含めて、眼科医でも意見がわかれるところ。私個人としては疲れ目などの回復にはまったく効果がないわけではない、という意見です。遊びの範囲でやる分にはいいのではないでしょうか」
●子の視力低下を防ぐには、早期受診が肝心
視力は身長と同じ。一度伸びた身長が縮まないように、一度下がった視力は回復しないのだという。つまり、わが子の目の異常や視力低下をいち早く察知することが大切だ。
「子どもの眼科検査は、実は3歳児健診と就学前検査の2回しかありません。どちらもごく簡易的な検査なので、もしもお子さんの視力や目の使い方に違和感を抱いたら、小児眼科で早めの受診をおすすめします」
もし受診してすでに近視や乱視などが始まっていることがわかったら、症状をそれ以上進行させないように気を配ろう。
「度数の合った眼鏡をきちんとつけ、定期的に視力を測って状態が進行していないか、専門家にしっかりチェックしてもらいましょう。悪くなってから治すのではなく、近視が進行し、強度近視にならないように普段の生活でお子さんの目の使い方に気をつけてあげてください。強度近視になってしまうと、眼鏡を装用する煩わしさだけでなく、将来的に目の病気になるリスクも上がりますから」
早期発見と適切なフォローで子どもの目を守るのは親の役目。普段の生活から十分に気をつけていこう。
(阿部花恵+ノオト)