「ここ数年は頭打ちにはなってきていますが、昔に比べ倍以上に小児肥満が増えています。それは、日本の社会状況が激変したことが原因と言えますね」
そう話すのは、やまざきこどもクリニック・院長の山崎公恵先生。つまり、昔に比べ、現代は太る要素にあふれているという。
「肥満の原因については、生まれもった体質的なものと環境的なものがあり、増加の背景には、やはり環境的なものが大きく関係していると思います。美味しいものがあふれた豊かな食生活、動かなくても情報も物もなんでも手に入ってしまう便利な社会。それに加え、テレビやゲーム、インターネットの普及、塾通い、防犯面などから子どもが外で遊べない環境など、子どもの活動量も減るばかり…。食べて動かなければ、当然太りやすくなりますね。今の生活からすると、この結果も仕方がないといえるかもしれません」(山崎先生 以下同)
●家庭の生活スタイルも激変
さらに、共働きの増加など、家庭のライフスタイルの変化が子どもの生活リズムに影響を及ぼしていることも原因のひとつと考えられる。
「お母さんがお仕事などで忙しくなったことにより、なかなかお子さんの食事の管理が行き届かなかったり、親御さんの生活リズムに同調してしまい、“夜型”傾向になるお子さんも増えています。夜型になれば、朝食欠食につながる可能性も。健やかなお子さんの成長には、バランスのとれた食事、規則正しい生活、適度な運動が不可欠とされます。食や生活習慣の乱れは肥満のリスクが高くなってしまいますので、気をつけなければなりません」
世界でも貧困の対極にイメージされる肥満が、貧困層で増加傾向にあるという問題がニュースにもなっている。
「小さい子どもほど、親から与えられたものを食べることになりますので、親御さんが用意する3度の食事やおやつなど食生活の管理がとても大事になってきます。もちろん、今は皆さんお忙しいですし家庭の様々な事情などあると思いますので、可能な範囲で心がけてあげてください」
意識しなくても太る要素が少なかった昔と違い、現代は太る要素で溢れている。ならば、その現状を憂うのではなく、理解したうえでできる限り意識して生活することこそが、予防&改善につながるのではないだろうか。
(構成・文/横田裕美子)