● マーガリンやサラダ油を使っても、まったく問題ない!
「日本国内の脂質摂取状況は米国とは異なるため、現時点で心配する必要はありません。トランス脂肪酸自体は、お肉や乳製品に普通に含まれる脂質の一種なので、これを摂取すること自体、安全性には問題がないというのが事実です。ただし、欧米のように菓子パンやらクッキーやらで過剰摂取し、トランス脂肪酸の摂取量が、1日の摂取エネルギー比率で2~3%を超えてくると、栄養バランスが偏り、血中悪玉コレステロールのLDLが上昇することが報告されています。そこでアメリカでは、今回の決断に至ったわけですが、現状の日本では、トランス脂肪酸の1日平均摂取量は約0.3%、多い方でも1%に届くかどうかという調査結果が出ているので、健康に悪影響が出るような状況ではありません」(山崎氏 以下同)
「入っているから使わない」という“あるなし論”ではなく、上記のグラフからもわかるように、健康被害についての問題は、あくまで“量”が判断基準になる。だいたい不安をあおる記事は、この日本人の摂取量に関する記述がいつも欠落している。
「もちろん日本においても、クッキーやケーキばかりを毎日たくさん食べていたら、トランス脂肪酸以前に栄養バランスが悪いため、健康を害することは明白。バランスの取れた食生活さえ送っていれば、マーガリンやサラダ油を使ってもまったく問題ないと言えます」
代用する必要はないが、亜麻仁油、えごま油に含まれる“オメガ3脂肪酸”は、血液中の脂質濃度を下げる働きがあることが科学的にも立証されている。
「もちろん体にはいいですが、これらの油は高級なので、普段使いで代用するのは家計的にも大変ですよね。中高齢を過ぎて血中脂質や心臓病・脳疾患が気になる方は、用途に合わせて採り入れるのもよいと思います」
何事もバランスが大切で、摂りすぎは禁物! 毎日クロワッサン&クッキーと極端な食生活さえしなければ、トランス脂肪酸はまったく怖いものではない。
(取材・文/蓮池由美子)