●食肉の成長ホルモン残留による発がんの報告はない!
「アメリカ産の肉がなぜ危険と言われるのか…おそらく成長ホルモンの使用が問題視されているのだと思いますが、実際、食肉に残留するホルモンの影響で人にがんができたという報告はありません。また、日本の水際対策として、輸入時に厳しくチェックされており、これまでの輸入肉のモニタリング検査でも、残留ホルモン濃度が食品衛生法の基準値を超えたことは一度もなく、心配の必要はありません。アメリカ産のみならず、今は中国産の食品も消費者は敬遠しがちですが、中国では、食品の輸出時に違反すると重罪に問われるくらい厳しくなっており、輸入検疫の水際対策、国内流通時のチェックもあわせて3段階の検査を通過した中国産の食品は、極めて安全と言えます」(山崎氏 以下同)。
成長ホルモン同様、ママたちが心配するのが、食肉業界で“インジェクション”と呼ばれる牛脂の注入だ。
「こちらも知るとショッキングな事実ですが、食感や風味のよいお肉を食べるために安全な処理を加えたもので、人に危害を与えることはありません。加工されていないカチカチな硬い肉と柔らかい霜降りのお肉、食べるならどちらを取りますか? と問われたら、普通の人は霜降りを選びますよね。もちろん黒毛和牛の未加工肉が買える方はそれで良いですし、脂質のとりすぎを避けたい方は赤身の多いお肉を選べばよいと思います。さらに生肉に関して言えば、本来表面に菌が付着しているので、フライパンで焼けば菌は簡単に死滅しますが、スーパーのミンチが信用できないから…と自宅で生肉からミンチにしようとするなどは非常に危険です。下手に家庭で処理すると、菌が肉のなかにまで侵入してしまうので、加熱しても内部の菌が死ななければ、食中毒になる危険性があるのです。プロにゆだねた肉は厳重な品質管理や出荷前検査で安全に保たれているので、それが成型肉であったとしても、安心して食べることができます。ただし、家庭でもお肉をしっかり加熱することは原則ですね」
「フグと一緒で、生肉もプロの手にゆだねるのが一番。自分で処理しようとすると死に至るおそれもある」と語る山崎氏。偏りがちでまゆつばな噂やデータはしっかりと精査し、科学的データが存在し、かつバランスが取れた意見は頭に入れて、ゆたかで安全な食卓を守る。これが、消費者力が高い賢いママの心得だ。
(取材・文/蓮池由美子)