ライフラインへの被害
そのため、中央防災会議のとりまとめでは、食料や飲料水、カセットコンロ、災害用トイレ、生活必需品などの備蓄を1週間分程度。また、燃料として車のガソリンを日ごろから満タンにしておき、灯油を使う家庭では1缶余分に備蓄することが推奨されています。
それでは、実際におきるライフラインへの被害を見ながら、備蓄の必要性を考えてみましょう。
●上水道
被災直後には最大約1,440万人、全体の約3割で断水すると想定されており、災害発生から1週間後の復旧率は約42%、1ヶ月後にはほとんどの地域で断水が解消されるとされています。
1人が1日生活するのに最低限必要となる水は、飲食用に2リットルと衛生のために1リットルの合計3リットルとされており、推奨される一週間分では1人21リットルの水が必要となります。
●下水道
被災直後には最大約150万人で下水道が利用できなくなると想定されており、災害発生から1ヶ月後にはほとんどの地域で下水道が使えない状況が解消されるとされています。
災害時に見落としがちなのがトイレの備蓄。排泄物の匂いが大きなストレスとなるほかに、不衛生な環境は感染症なども引きおこします。また、災害時にはゴミ回収もきませんので、しっかりとした対策が必要となります。
人がトイレに行く回数は平均1日5回となりますので、1週間分では1人35個の非常用トイレの用意が必要となります。
電力
被災直後には最大約1,220万軒、全体の約5割で停電すると想定されています。
災害発生から1週間たっても復旧率はほぼ変わらず、多くの地域で復旧するには1ヶ月かかるとされています。
都市ガス
被災直後には最大159万戸、全体の17%でガスが停止するとされており、 災害発生から1週間後の復旧率は約24%、6週間後にはほとんどの地域で解消されるとされています。
停電にそなえてLEDライトやランタンを準備することも必要ですが、ガスが止まった場合や、オール電化の家では食事を作ることができなくなります。お米やパスタ、冷蔵庫の食材などを1週間分の食料に含めて活用するためにも、カセットコンロとカセットボンベ(ガス缶)の用意をしておきましょう。カセットコンロで調理をするのであれば、カセットボンベは1週間で1人あたり6本くらいの量があるとよいでしょう。
また、電気と比べて都市ガスが復旧するまでの期間は長くかかります。復旧が長期化したときに備えて電気で調理するためのIH調理器(IHコンロ)などもあわせてあるとよいでしょう。
固定電話・携帯電話・インターネット
被災直後には大勢の人が同時に電話を使うため混み合い、大部分で固定電話・携帯電話ともに通話ができなくなります。
その後も固定電話は最大470万回線、全体の約5割で通話ができなくなると予測され、災害発生から1ヶ月後の復旧率は81%とされています。携帯電話は1日後には非常用電源からの電力がなくなるため基地局の46%が停止し利用ができなくなります。
固定電話・携帯電話ともに多くの地域で復旧するまで1ヶ月程度がかかるとされています。また、インターネットへの接続は、固定電話回線の被災や基地局の停止に影響され利用できない地域が発生します。
災害がおきた直後は沢山の人が電話を使うため、電話回線が混み合いつながりにくくなります。公衆電話は優先的につながるようになりますので、常に小銭を用意しておくことがおすすめです。
また、相手が電話に出ないときには、災害用伝言ダイヤルを使うと連絡が取りやすくなりますので、日頃から家族で使い方を練習しておきましょう。
スマートフォンや携帯電話は連絡や情報収集にとても役立ちますので、モバイルバッテリーの備蓄をしておきましょう。
また、携帯電話やインターネット回線が使えないときに、気にしすぎて何度も画面を見てバッテリーを消費しすぎないように。1時間に1回、もしくは2時間に1回などチェックする時間を決めておくことをおすすめします。
今回紹介した首都直下地震の被害は、考えられる最大の被害を予測したものになります。そのため、次に来る地震が同じ規模の被害になるかはわかりませんが、今後30年の間に約70%の高い確率で大きな地震がおきることはわかっています。
災害の被害は想定を大きく超えることもありますので、どのような地震がおきても大丈夫なようにしっかりと備えておきましょう。
参考資料
首都直下地震対策検討ワーキンググループ : 防災情報のページ – 内閣府
首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)
【別添資料1】 ~人的・物的被害(定量的な被害)~
【別添資料4】 ~首都直下のM7クラスの地震及び相模トラフ沿いのM8クラスの地震等に関する図表集~
災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成18年7月 1923 関東大震災
第5章 火災被害の実態と特徴
配信: moshimo ストック
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