年齢によって基礎代謝はどう変化する?
「年を取ると太りやすい」とよくいわれていますが、それはどうしてなのでしょうか。それには、基礎代謝が大きく関係しています。まずは年を取ると基礎代謝がどのように変化していくのかを見てみましょう。
そもそも基礎代謝とは?
基礎代謝とは、体温を平熱に維持したり、心臓や肺などの内臓を動かしたり、筋肉を動かしたり、生命を維持するために最低限必要なエネルギーのことです。何もせずにじっとしているだけでも消費されるエネルギーで、寝ているときでもテレビを観ているときでも、24時間絶え間なく消費され続けています。
1日の総消費エネルギーは、大きく分けて基礎代謝量、身体活動量、食事誘発性熱産生(DTI)で構成されています。基礎代謝量は全体の約6割を占め、身体活動量が3割、食事誘発性熱産生(DTI)が1割という割合になっています。
身体活動量とは、運動や家事などの日常生活で消費されるエネルギーのことです。そして食事誘発性熱産生(DTI)とは、食事のときに噛む、消化する、吸収する、代謝するといった、食事で消費されるエネルギーのことです。
運動したり、食事をしたりしたときは、基礎代謝のうえに、身体活動量や食事誘発性熱産生で消費されたエネルギーが加算されます。基礎代謝はどんなときでも自動的に消費されるエネルギーなので、体にとって非常に影響が大きいことがお分かりいただけると思います。
年齢変化と基礎代謝
それでは、基礎代謝量は年齢を重ねるとどのように変化していくのでしょうか。男女別・年齢別の基礎代謝量を見てみましょう。
<男女別・年齢別の基礎代謝量>
【男性】
10~11歳 1,330kcal
12~14歳 1,550kcal
15~17歳 1,570kcal
18~29歳 1,520kcal
30~49歳 1,520kcal
50~69歳 1,380kcal
【女性】
10~11歳 1,240kcal
12~14歳 1,350kcal
15~17歳 1,270kcal
18~29歳 1,180kcal
30~49歳 1,140kcal
50~69歳 1,110kcal
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」
男女とも10代半ばから後半をピークにして、その後は年齢とともにどんどん下がっていきます。成長期である10代は骨や筋肉などが発達するため、多くのエネルギーを必要とし、基礎代謝も高くなります。一方、成長期を過ぎた大人は、骨や筋肉を作るためのエネルギーはそれほど必要としません。そのため20代後半から30代に入る頃になると、徐々に筋肉量は落ちていき基礎代謝量も下がっていくのです。
年齢とともに基礎代謝が下がるとどうなる?
基礎代謝量が年々落ちているのに、若い頃と同じ食事をしていると、当然、摂取カロリーの取り過ぎになります。この取り過ぎた分のエネルギーは脂肪となって、体に蓄積されてしまいます。
では、具体的にどのくらい脂肪として蓄積されてしまうのでしょうか。
タニタの「基礎代謝の低下による脂肪増加量試算結果」によると、18歳の基礎代謝を基準にして、その後も同じ食生活を続けるとすると、単純計算で男性では1年に0.4kg、女性では0.3kgの脂肪が蓄積されます。増加した体重を維持するためのエネルギーを考慮して、さらに計算していくと、30歳になったときには男性は4kg、女性は3.4kg増え、40歳のときには男性は7.2kg、女性は6.2kg増えることになります。
食べ過ぎているわけでないのに、年齢が上がるにつれて「最近、太ってきた…」と感じるのはこのためなのです。
出典:タニタ「基礎代謝の低下による脂肪増加量試算結果」より
基礎代謝が下がったときにはどうすればよいか?
それでは、基礎代謝の低下は仕方がないことと諦めるしかないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。少し意識を変えて生活を見直すだけで、基礎代謝の低下を遅らせることはできます。
基礎代謝の低下を防ぐポイント
基礎代謝の低下を防ぐには、3つのポイントがあります。筋肉量を増やすこと、基礎代謝を上げる食材を積極的に取ること、体を冷やさないことです。前述のとおり、人間は加齢とともに基礎代謝が下がるのは避けられません。そのため、筋トレと食生活を変えることで、基礎代謝をできるだけ下げないようにするのです。
筋肉はエネルギー消費工場
筋肉は体の中でも最もエネルギーを消費する部位です。そのため筋肉量が増えれば、消費エネルギーが増え、おのずと基礎代謝量もアップします。筋肉量を増やすと聞くと、ジムでのハードな筋トレを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、それは必ずしも必要ではありません。自宅で簡単にできるスクワットなどでも十分に効果があるのです。筋肉は「今さら鍛えても遅い」ということはなく、いくつになっても鍛えることができます。そのため、年齢に合ったトレーニングを毎日することで、基礎代謝の低下を遅らせることは可能なのです。
また、東京大学の石井直久教授によると、筋トレのような無酸素運動は運動後のエネルギー消費も期待できるそうです。筋肉を1kg増やすと、基礎代謝量はだいたい50kcal増えるといわれています。50kcalというととても少なく感じますが、これを1年分に換算すると18,250kcalとなり、体脂肪に換算すると約2.5kgとなります。何もしていなくても1年で2.5kgの脂肪が減るのなら、効果は大きいといえるのではないでしょうか。
出典:「エネルギー消費に効く運動は?」より
年齢別基礎代謝を下げないための方法
それぞれの年齢に合った基礎代謝を下げない方法をご紹介します。
30代の基礎代謝を下げない方法
30代に入ると筋肉が落ち始め、30代後半には基礎代謝もぐっと下がります。しかしそうはいっても、まだまだ序の口です。これ以降に基礎代謝が大きく下がってしまう前に、できることを始めておきましょう。
・朝食を抜くと基礎代謝を落ちるので、1日3食を心掛ける。
・体を温める効果のある生姜や唐辛子、香味野菜を取る。
・できるだけ温かい食事を取る。(サラダではなく温野菜など)
・ジョギングや水泳などの有酸素運動をして体温を上げる。(体温の上昇は基礎代謝を上げます。)
・スクワットなど筋力に負荷をかけるトレーニングを習慣化しておく。
40代の基礎代謝を下げない方法
基礎代謝が低下するだけでなく、下肢の筋肉量もぐっと減るのが40代です。しかし、体はまだまだ十分に動くので、筋力アップも意識的に行うとよいでしょう。女性の場合、ホルモンバランスも崩れ始めるので、ストレスなどで食事量が増えないように注意することが大切です。
・肉、魚、卵、大豆などたんぱく質など、代謝アップに効果的な食材を積極的に取る。
・豚肉、ウナギ、レバー、かつおなど、ビタミンB1、B2、B6を含む食材を取る。
・ストレッチや軽い筋トレをして、筋肉量が落ちないようにする。
(スクワットや階段の上り下りなど筋肉に強い負荷をかけて筋力量を上げる)
50代の基礎代謝を下げない方法
さらに筋肉量が減り、基礎代謝量も低下します。将来を見据えて、食事や生活を整え、脂肪をためない太りにくい体を目指すようにします。運動は強い負荷をかけるのではなく、軽めの負荷で毎日続けられるものにしましょう。無理をしないことが大切です。
・朝食でたんぱく質を含む食材を1品は取り、基礎代謝を上げる。
・強い負荷のかかるトレーニングよりは、軽めで続けられる運動をする。
(速足で歩く、階段や坂を上がるなど)
・極端に食事の量を減らさず、バランスのよい食事を心掛ける。
(極端に食事を減らすと基礎代謝を下げます)
まとめ
基礎代謝は年齢変化によってどんどん低下していくものですが、少し気を配ることでそれを遅らせることはできます。無理をせずコツコツと続ければ、効果は期待できますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。