日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震。想定震度M9でおきる、北海道から関東におきる被害予測

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震。想定震度M9でおきる、北海道から関東におきる被害予測

日本政府による中央防災会議では、今まで南海トラフ地震や首都直下地震がおきたときにどんな被害がおきるかを想定することで、公共機関や民間企業、市民への防災減災対策に活かしてきました。
その他にも、日本海溝・千島海溝沿いでマグニチュード9クラスの巨大地震がおきる可能性があることから、2021年12月21日に被害想定が発表されました。

これから紹介する被害は「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波」がきたときにおきる、「最大となる被害想定」となっています。
次に来る地震がどのような大きさになるかはわかりませんが、東日本大震災のように1000年に一度といわれる地震がおきたとしても、安全にすごせるようにしっかりと準備しておきましょう。

日本海溝・千島海溝沿いの被害がおきる場所は?

中央防災会議から発表された想定では、日本海溝で地震がおきた場合と千島海溝でおきた場合、それぞれに分けて被害を予測しています。

日本海溝モデル

日本海溝は北米プレートと太平洋プレートと呼ばれる大きな岩盤の境目で、北側は北海道のえりも岬沖から南側は伊豆沖までの範囲です。この中の北海道の日高沖から、岩手県の三陸沖の間が震源となり、マグニチュード9クラスの地震がおきることを想定した場合を「日本海溝モデル」としています。

日本海溝モデルで地震がおきた場合には、青森県、岩手県、宮城県の各県で震度6弱、最大震度は6強となります。
津波が5mを超える地域は、北海道では道東、道南の南側。本州では青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県と非常に広い範囲でおこります。とくに被害が大きな地域としては、東北地方では東日本大震災と同じ規模となり岩手県宮古市で最大約30m、青森県では東日本大震災を超える25mの津波となります。さらに北海道の道東で20mに迫り、道南では10mに迫る津波がおきることとなります。

千島海溝モデル

千島海溝は北米プレートと太平洋プレートの境目で、北側はロシアのカムチャッカ半島から、南側は北海道のえりも岬の範囲です。この中で北海道の道東沖が震源となり、マグニチュード9クラスの地震がおきることを想定した場合を「千島海溝モデル」としています。

千島海溝モデルでのゆれの大きさは、北海道道東とえりも町で6強となり、最大震度は7となります。
津波が5mを超える地域は、北海道では道東、えりも町、苫小牧町。本州では青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県と非常に広い範囲でおこります。とくに被害が大きな地域としては、北海道えりも町では最大28m、北海道道東のえりも町から根室市の間で20~25m、本州では青森県の太平洋側、岩手県、宮城県で10~15mの津波となります。

両方のモデルを合わせて考えると

日本海溝モデルと千島海溝沿モデルを別々に紹介しましたが、わかりやすく両方のモデルで被害が予想される地域をあわせると、北海道では道東、道南の南側。本州では青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県となり、北海道から関東にかけて非常に広い地域で、地震への備えをする必要があります。

住宅・人への被害

死者数は日本海溝モデルで最大19万9千人/千島海溝モデルでは最大10万人になるとされています。これは被害が大きくなるとされる冬の深夜に地震がおき、早期避難率が低かった場合の想定となりますが、東日本大震災では死者1万5,859人、行方不明者3,021人とされていますので、悪い条件が重なると相当な被害がおきることがわかります。
しかし、早期避難、津波避難ビル・タワーなどの活用・整備、建物の耐震化対策などをすることで死者数を大きく減らせることも想定の中に書かれています。おこる被害と対策を知って、自分の防災対策をあらためて確認しておきましょう。

津波による被害

日本海溝モデルで全壊する建物は最大22万棟、このうち津波による全壊は21万1千棟となり約95.9%となります。千島海溝モデルで全壊する建物は最大8万4千棟、津波による全壊は7万7千棟となり約91.7%をとなります。
また、死者数は日本海溝モデル・千島海溝モデルともに、津波が原因の99.9%を占めるため、津波での被害に最も気をつける必要があります。

被害が最も大きくなる冬の深夜に地震がおきた場合、津波での死者数は日本海溝モデルで19万9千人/千島海溝モデルでは10万人となりますが、これは早期避難をする人が東日本大震災よりも少なく(※1)、津波避難ビルなどが使われない場合の数になります。
同じ季節・時間でも、早期避難する人が東日本大震災よりも多く(※2)、周りに呼びかけながら避難を行い、津波避難ビルなどを使う場合には、日本海溝モデルで4万7千人(約76.4%減)/千島海溝モデルでは4万4千人(約56%減)となり、被害を大幅に減らすことができます。

※1 地震直後に避難する人が20%、用事を済ませてから避難する人が50%、津波が迫るまでその場にとどまる人が30%の場合。
※2 地震直後に避難する人が70%、用事を済ませてから避難する人が30%、津波が迫るまでその場にとどまる人が0%の場合。

このように、いち早い避難は命を守ることにつながります。そのため、津波の可能性がある地域にいる人は、事前に津波避難ビルや津波避難タワーの場所を確認しておくこと。そして、非常用持ち出し袋(防災リュック)は玄関や自分の部屋の取り出しやすいところにおいておき、地震があったときにはすぐに家を出ることが大切です。
家族を探して時間を取られたり、ものをとりに自宅に戻ったりして津波に巻き込まれるケースが多くありますので、地震がおきたらそれぞれバラバラに避難場所に向かうことを家族のルールとして決めておくとよいでしょう。
また、他人が避難をしていることに気づくと、つられて避難をする人が多くなりますので、大きな声で呼びかけながら避難をするようにしましょう。

また、津波による被害が一番大きいといっても、ゆれによる建物の全壊は日本海溝モデルで最大1,100棟/千島海溝モデルで最大1,700棟、火災による消失が日本海溝モデルで最大100棟/千島海溝モデルで最大3,100棟となっていますので、耐震補強や家具や家電の転倒対策、地震のときに電気を止める「感震ブレーカー」での火災防止対策もしっかりしておきましょう。

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