児童の虐待事件の報道に触れるたびに、そんなふうに「他人事」として見ていないだろうか。だが、ちょっと立ち止まって考えてほしい。イヤイヤ期の幼児についカッとなって手をあげてしまったことはないだろうか? もしくは実際に手をあげなくても、「手をあげかけた」ことは?
親だって完璧な人間ではない。今現在、どんなにわが子を愛していても、何かのきっかけで歯車がくるい、「しつけ」のつもりで子どもに「虐待」を行ってしまう可能性だってゼロではないのだ。
では虐待しない親になるためには、どんなことに気をつければいいのだろう? 社会福祉士、精神保健福祉士、学校心理士などの資格を持ち、児童虐待の現場に詳しい亀田秀子さんに話を聞いた。
「虐待は“強者(大人)と弱者(子ども)のシーソーゲーム”に例えることができます。子どもが自分の思い通りにならないことへの不安や苛立ち、それを我慢できない大人が、暴力や暴言で子どもを支配しようとする。歪んだパワーゲームの刷り込み、それが虐待の本質です」(亀田さん 以下同)
タチが悪いことに、一度自分のなかに染み付いた暴力や暴言は「クセになりやすい」のだという。
「暴言や暴力は即効性があるので、一度そのクセがついてしまうと、丁寧に注意したり諭したりすることが面倒になってしまいます。それを親側が“しつけ”と勘違いして頻繁に行ってしまうと、歯止めがきかなくなり、虐待はどんどんエスカレートしてしまいます」
●ついカッとなって、子どもに手をあげそうになったら…
「怒りの感情を持ちやすい、怒りをコントロールしにくいという問題を抱えている保護者ほど、虐待がエスカレートしやすくなります」
普段から「カッとなりやすい」という自覚がある人は、その悪いクセが子どもに対して出ないように十分気をつけよう。では具体的には何をどうすればいいのだろう?
「怒りに振り回されず、冷静になるためのコントロール法を身につけましょう。怒りがカッと湧き上がったら、ゆっくりと息を吐く、吸う、を繰り返しながら10数えてください。そのあいだに理性が働き出し、冷静さを取り戻すことができます」
また、カッとなっている自分自身を認知することも大切だという。どこか高い場所から冷静な自分が、感情的になっている自分を眺めている。そんな様子を思い浮かべてみるだけでもクールダウンできるそう。
「怒りの感覚を体で実感することも有効です。頭が熱くなる、拳に力が入るなど、カッとなったときの体の感覚を知っておきましょう。自分の“怒りのものさし”を1~10でイメージして、今がどのレベルなのか自覚し、目安をつけておくと怒りに対処しやすくなります」
大切なのは怒りに振り回されないこと、暴力・暴言を習慣化しないことだ。そのためには日頃から気持ちを吐き出す場や、自分なりのストレス発散法を見つけておこう。
「子どもと向き合うのがつらいときは、ちょっと離れてみることも大事。困ったときはひとりで悩まないで、児童相談所や子育て支援センターなど、周囲に助けを求めてください。誰かに話を聞いてもらうだけでも、心が軽くなって、育児にゆとりが生まれるはずです」
(阿部花恵+ノオト)