3、事実婚の夫婦に子供ができたときの親権
子供を授かっても事実婚を継続する場合、子供の親権はどのような扱いになるのでしょうか。本章で詳しくみていきましょう。
(1)戸籍上の夫婦にならないと「共同親権」にならない
日本の法制度では、戸籍上の夫婦にならなければ、夫婦それぞれが共同親権を持つことができません。
事実婚状態で家族として一緒に生活をしていても、片方の親は子供に対して親権を持っていないということになります。
「親なのに親権を持てないのはおかしい!」という気持ちを抱えるのも無理はありません。
しかし、現在の法制度ではこのような取り扱いとなっているのです。
(2)事実婚夫婦の親権は「原則母親」が持つ
事実婚夫婦の場合の親権は、原則として生まれてくる子供の母親が持ちます。
本項では、事実婚夫婦における親権に関する以下の事項について解説します。
- 親権がない親の扱い
- 「認知」について
①親権がない親の扱い
事実婚夫婦において、親権がない親は、子供の代理人として法律行為をすることができません。
例えば、子供の銀行口座を開設したいと考えても、親権がない親は、子供の代理人として口座開設をすることができません。
病院での面会についても、親権がない親は子供と面会できないという対応をしている病院もありますので、注意が必要です。
以上のように、子供の親であるにもかかわらず、親として当たり前にできるはずのことができないケースが出てきます。
「親権」という存在が重要になる場面もありますので、事実婚を貫く場合には、しっかり認識しておくようにしましょう。
②「認知」とは
事実婚夫婦の子供の親権が、原則母親となるなら、父親は法制度上何もできないのかというと、そうではありません。
日本の制度では、戸籍上夫婦でない男女に子供が生まれた場合、父親にあたる人に「認知」という制度が認められています。
認知とは、事実婚夫婦のように、戸籍上婚姻関係にない男女に子供が生まれた場合、生まれた子供を自分の子供であると認める制度です。
婚姻関係にない男女に子供が生まれた場合、子供は女性から生まれるため母親が誰なのかはわかります。
しかし、戸籍上は、父親が誰になるのかはわかりません。
「認知」という制度を利用して、父親に当たる人が認知の手続をとると、生まれた子供の父親が誰なのかが明らかになります。
具体的には、認知をすると、父親にあたる人の戸籍に下記項目が記載されることになるのです。
- 認知日
- 認知した子の氏名
- 認知した子の戸籍
母親と子供の戸籍にも、子供の父親の欄には認知をした父親の名前が記載されるため、子供の父親の存在が明らかになります。
4、事実婚の夫婦の子供の苗字
事実婚夫婦の子供の苗字は、どのような扱いとなるのかについて、詳しくみていきましょう。
(1)「原則母の苗字」を名乗る
事実婚の夫婦の子供は、原則として「母の苗字」を名乗ることになります。
戸籍上夫婦になっていない場合、子供から見れば、自分と母親の苗字は同じですが、父親とは苗字が異なるという状態になります。
(2)例外的に父の苗字を名乗ることも可能
子供の苗字は原則として母の苗字になりますが、例外的に父の苗字を子供が後から名乗ることも可能です。
事実婚の未成年の子供の苗字を両親のいずれか一方の苗字に変更する場合は、特別の事情の存在と家庭裁判所の許可が必要となります。
子供が成人に達している場合は、特別の事情がなくても、家庭裁判所の許可があれば子供の意思で苗字を変更することができるとされています。
配信: LEGAL MALL