ADHD(注意欠如/多動症)のわが子への対策は? 

第2回 わが子はADHD(注意欠如/多動症)かも?
注意力、衝動性、多動性を自分でコントロールできない脳神経型の疾患と言われている発達障がい・ADHD(注意欠如/多動症)。日々のわが子の言動をみて、もしかしたらADHDかも? と思ったら、どうすればいいのでしょうか?
児童青年精神科医の新井慎一先生にお話を伺いました。

「いきなり医療機関で診察を受けるのは抵抗がある方もいると思いますので、まずは学校の先生に相談して、学校でのお子さんの様子を細かく聞き取り、学校での集団生活に支障をきたしているようであれば、さらに自治体の教育相談機関などで相談してみてください。そこでは、“WISK(ウィスク)”という発達検査などもしてくれますので、その時点でADHDの疑いがあるような場合は、医療機関できちんと診断したほうがいいかなと思います」

では、もしわが子がADHDと診断されたら、日々どのように対応すればいいのでしょうか?

●子どもの特性に合った環境づくりや対応の工夫

「ADHDには、不注意優勢型と多動性・衝動性優勢型、混合型の3つの特性があります。わが子の特性を理解したうえで、それに合った環境づくりや対応の工夫を行い、問題解決能力を高めていきます」

【不注意優勢型の子への対策の例】

・気が散りやすい
⇒刺激となるもの、音(注意をそらすもの)をなるべく減らす。
・面倒くさいことは取り組みにくい
⇒自分で行動を選択させる。
・すぐ忘れる
⇒メモをとり、必ず見える場所に貼る。記録する。見直し・確認する習慣をつける。人の力を借りる。
・効率よくものごとを進められない
⇒やることを紙に書き出し、優先順位をつける。
⇒緊張感を高める工夫をする。

「対策の重要なポイントとしては、やり方はこちらが提示しても、具体的な内容は本人に考えさせ、決めさせること。例えば、“忘れないようにメモを書いて貼る”ということは提示しても、何に書いてどこに貼るということは本人に決めさせるのです。そういったことがモチベーションにつながります。それから、できないことを叱るのではなく、約束ごとが守れたらポイントを与え、ポイントがたまったらご褒美というゲーム性をもたせるのも効果的です」

ADHDのわが子への対策

【多動性衝動性優勢型の子への対策の例】

・少し頑張ればできる目標を設定し、スモールステップで取り組む
・声かけで自覚を促し、自分の言動を振り返るクセをつける
・トラブルが生じたときは、(1)どうしようと思ったのか? (2)結果どうなったのか? (3)今後どうすればいいか? 話し合う機会を設ける
・思い切り体を動かし、発散する機会を作る

「基本的に多動性・衝動性優勢型の場合は、年齢とともに目立たなくなるので、その時期まではこのような対策で乗り切りましょう」

●投薬による治療

症状の程度が強い場合や、状況に応じて、投薬治療とう方法もあるそう。

「ADHDで処方される薬には、コンサータ、ストラテラという2種類の薬があります。投薬治療については、病院や親御さんの方針によって対応は違ってきます。効き目にもかなり個人差があり、劇的に効く子から全然効かない子まで様々です。うまくいくケースでは、授業中に先生の話を聞けなかった子が集中して聞けるようになるなど効果がみられます。受験の時期に薬を使われる方もいます。私のクリニックでは、やる気と自信を失くしてしまう悪循環にハマってしまったときを目安に処方しています」

お子さんの苦手なことを受け入れ、よく理解し、様々な対策で根気強く向き合っていくことが大事のようです。
(構成・文/横田裕美子)

▼関連記事をもっと読むなら▼
子ども・大人別に見る発達障害の特徴とは?監修付き記事10選

お話をうかがった人

新井慎一
新井慎一
尾山台すくすくクリニック 院長 (児童青年精神科医精神保健指定医、精神科専門医)
都立梅ヶ丘病院(現都立小児総合医療センター 児童思春期精神科)に9年勤務しキャリア磨く。 平成18年に『尾山台すくすくクリニック』を開 業。地域に根ざした児童青年精神医療を目指し ている。
都立梅ヶ丘病院(現都立小児総合医療センター 児童思春期精神科)に9年勤務しキャリア磨く。 平成18年に『尾山台すくすくクリニック』を開 業。地域に根ざした児童青年精神医療を目指し ている。