「ADHDの子は、普通ならできることがいろいろと苦手なので、親御さんとしてももどかしく、つい叱りたくなってしまうことも多いと思います。しかし、自分をコントロールできない不甲斐なさで苦しんでいるのは、まずお子さん本人だということを理解してあげてください。どうか、本人がどう感じているか想像してみてください。また、親御さんもひとりで悩んで抱え込んでしまうと辛くなってしまうので、なるべくいろんな人に相談しながら、お子さんにとっての最善の方法を模索していってほしいと思います」
さらに、他の子と比べることも、決してしてはいけないという。
「誰にでも得手不得手はありますよね? わが子が持った個性として、環境や対応の工夫をしてサポートしてあげてください」
わが子の将来についての不安を抱える親御さんも多いそうだが、決して不安に思うことはないという。
「実は、ADHDの人は、好きなことには他の人より集中する、過度な緊張感があると力を発揮しやすいという特徴もあるんですね。なので、自分の好きな方向に進むとADHDの症状が目立ちにくいうえに、能力や才能を発揮できるケースも多いです。偉人のエジソンや、近年ではオリンピック競泳の金メダリスト(史上最多22個のオリンピックメダルを獲得)マイケル・フェルプス選手もADHDだと言われています。お子さんの苦手な部分にばかり目をやるのではなく、どうかお子さんの可能性を信じて好きなこと、得意なことを伸ばす環境づくりをしてあげてください」
そして、何より親御さんに心がけてほしいことがあるそう。
「まずは親御さんがお子さんの苦手な部分をしっかり受け止めてやること。親御さんが受け入れてあげられなければ、お子さんも“自分はダメなんだ…”と、前向きになれません。お子さんはいずれ親元を離れて自分の力で社会を生き抜いていかなければなりません。だからこそ、お子さん自身が自分の特性を自覚し、自信を持って自分なりに問題解決していけるように励まし、サポートしてやることが大事です。そして、将来は自分の特性に合った生き方をしていってほしいですね」
支援の第一歩は、周りの理解と思いやり。なかでも、親の励ましとサポートは、子が自信を持って生きていく何よりの原動力なのです。
(構成・文/横田裕美子)