3、非親告罪で告訴が取り下げられるとどうなる?
これまで説明してきたとおり、非親告罪では告訴がなくても起訴が可能です。
では、もし非親告罪で告訴が取り下げられた場合には、どのような影響が生じるのでしょうか。
(1)告訴の取り下げについて
被害者などは、起訴される前であれば一度した告訴を取り下げることができます(法的には「取消し」と言います。)。一度告訴を取り下げると、再度告訴をすることはできなくなります。
(2)親告罪では告訴が取り下げられると起訴されない
親告罪の場合、告訴が取り下げられると起訴はされません。
たとえば、名誉毀損罪で加害者が捜査されていても、事後的に被害者との示談が成立するなどして、被害者から告訴の取り下げがあれば、刑事裁判になる可能性は消滅します。
このように、親告罪において、告訴の取り下げは、刑事裁判にできるか否かを決定的に左右するのです。
(3)非親告罪では告訴が取り下げられても起訴される可能性がある
一方、非親告罪の場合、告訴があったことは起訴の要件ではないため、告訴が取り下げられても加害者が裁判にかけられる可能性は残ります。
とはいえ、告訴の有無は検察官が起訴するかどうかを判断する際に少なからず影響を与えます。
4、非親告罪では示談をしても意味がない?
以上からすれば、「非親告罪では、告訴の取り下げがあっても起訴されうるから示談は無意味」と考えられるかもしれません。本当にそうなのでしょうか。
本章では、非親告罪における示談の意義を解説します。
(1)非親告罪でも示談は重要
結論からいうと、非親告罪でも示談は重要な意味を持ちます。
示談の成立により、被害が金銭的に一定程度回復し、被害者が加害者への処罰を望まなくなった、あるいは、ある程度は許してもらったということができます。
検察官や裁判官は、処分を決したり、起訴不起訴の判断をするときに、被害状況の回復や被害者の処罰感情を重く見るため、示談の成立は加害者の処分を軽くする方向に働くでしょう。
(2)不起訴となる可能性が高まる
示談がなされていると、検察官が不起訴とする可能性が高まります。
特に、被害金額の少ない窃盗罪などの財産犯では、金銭的に被害が回復されていて、被害者に処罰感情がなければ、起訴する必要性はないと判断されやすいです。
また、従来親告罪であった性犯罪についても、非親告罪となった今でも、被害者の意向は依然として重視されているため、示談していれば不起訴の可能性は高まります。
不起訴となれば、前科はつきません。非親告罪であっても、起訴前に示談して告訴を取り下げてもらうのは重要といえます。
(3)起訴されても刑罰が軽くなる可能性が高い
被害が大きいなどの理由で、示談が成立していても起訴されるケースはあります。
その場合でも、裁判官が示談の事実を有利に評価して、刑罰を軽くする可能性が高いです。
判決で執行猶予が付く、実刑でも刑期が短くなるといった効果が期待できます。
配信: LEGAL MALL