熟年離婚で年金はどうなる?老後に困らないための6つの知識

熟年離婚で年金はどうなる?老後に困らないための6つの知識

3、熟年離婚時に年金分割をする方法

では、熟年離婚時に年金分割をするにはどうすればよいのでしょうか。年金分割の手続きには「合意分割」と「3号分割」の2種類がありますので、それぞれ解説します。

また、年金分割の請求期限にも注意しましょう。

(1)合意分割

合意分割とは、夫婦間の合意によって按分割合(厚生年金の納付記録を何%ずつ分割するかという割合のことです。)を決定する分割方法です。家庭裁判所の調停や審判、裁判で按分割合が決められる場合も、合意分割に含まれます。

按分割合の上限は2分の1、下限は夫婦の標準報酬の合計額に対して、少ない方の標準報酬額が占める割合です。夫婦が合意すれば、この範囲内で自由に按分割合を決めることができます。ただ、実務上は大半のケースで按分割合は2分の1とされています。

請求手続きは、離婚した後に「標準報酬改定請求書」と一緒に、離婚協議書や調停調書、審判書、判決書等の按分割合等を明らかにした書類を年金事務所の窓口に提出します。

その他、必要書類等の詳細は、こちらの記事でご確認ください。

(2)3号分割

3号分割とは、夫婦間の合意や家庭裁判所での手続きなしで年金分割ができる制度のことです。

「3号」というのは、国民年金の「第3号被保険者」のことを意味します。第3号被保険者とは、会社員や公務員で厚生年金に加入している人(第2号被保険者)に扶養されている人のことです。

専業主婦が離婚時に会社員や公務員の夫に対して年金分割をするのが、3号分割の典型的なケースです。

3号分割における按分割合は、一律2分の1と定められています。

請求手続きは離婚した後に単独で行うことができ、「標準報酬改定請求書」と一般的な必要書類を年金事務所の窓口に提出します。

なお、3号分割で分割できるのは2008年4月1日以降の納付記録のみです。それよりも前の納付記録についても分割を求める場合は、別途合意分割を行う必要があります。

(3)離婚から2年が経過すると請求できなくなる

どちらの分割方法による場合も、請求期限は離婚が成立した日から2年以内です。

離婚後に元配偶者と話し合ったり調停や裁判などで按分割合を決めようとすると、請求期限に間に合わなくなる可能性があります。

合意分割をする場合は、按分割合を決めてから離婚するようにした方がよいでしょう。

4、熟年離婚で年金を少しでも多く分割してもらうためのポイント

熟年離婚で年金分割が可能なケースでは、少しでも多くの年金を分割してもらいたいと考えることでしょう。

そのためには、以下の3つのポイントを検討してみてください。

(1)できる限り3号分割で請求する

年金分割の按分割合は2分の1が上限ですので、一律2分の1と決められており、しかも配偶者との合意が不要な3号分割の方が有利です。

2008年4月1日以降の納付記録を分割することが必要な場合は合意分割を行う必要があります。

離婚調停や審判、離婚裁判でも、よほどのことがない限り按分割合は2分の1となりますが、長年別居していて、その間連絡を取り合うこともなく、生活費のやりとりもなかったような場合には2分の1を下回る可能性もあります。

このような場合や、配偶者との話し合いが進まない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

(2)婚姻期間は長い方が有利

年金分割は配偶者の厚生年金の納付記録を分割するものですので、納付期間が長いほど多くの年金を分割してもらうことが可能となります。

したがって、熟年離婚後の生活費を確保するためには、夫の定年退職を待ってから離婚を切り出すというのも理に叶った選択肢の一つです。

配偶者からDVやモラハラを受けている場合などで、身の危険を感じるような場合は離婚を引き延ばすべきではありません。しかし、老後を見据えて熟年離婚したいという場合は、配偶者の定年退職まで待つのもよいでしょう。

(3)配偶者からの年金分割は拒否する

ご自身にも厚生年金への加入歴がある場合は、できれば配偶者からの年金分割を拒否したいところでしょう。

年金分割の請求権は、離婚原因にかかわらず離婚する人に認められた権利ですので、請求されると基本的に拒否することはできません。拒否するためには、夫婦間の話し合いによって「年金分割の請求をしない」という合意を得る必要があります。

離婚原因について、配偶者側に不倫やDVなどの有責性があれば、このような交渉が可能となる場合も少なくありません。しかし、配偶者側に有責性がなければ、この交渉は難しくなる可能性が高いです。

交渉を有利に進めるためには、弁護士に依頼した方がよいでしょう。

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